研究課題
好酸球性副鼻腔炎の患者の鼻茸には多数の活性化された好酸球が認められるため、局所への好酸球の遊走と活性化、およびこれによる粘膜傷害の惹起がその病態生理の重要な要素と考えられているが、近年の解析により局所におけるIgEの産生が関与していると考えられている。ヒトのMast cellはTryptase(T)のみをもつMCTとTryptaseとChymase(C)をもつMCTCとに分類され、両者は各組織に混在しているが、粘膜表層にはMCTが粘膜深層や皮膚、血管、結合組織にはMCTCが多いとされている。我々は好酸球性副鼻腔炎、非好酸球性副鼻腔炎症例の2群に分け、各群のMast cell subtypeを検索するため、Mast cell chymase、Tryptaseについて免疫染色と定量PCRで検討した。各群のMast cell chymaseの細胞数と定量PCRによるmRNA発現は、細胞数、mRNAともに非好酸球性群で増多していた。Mast cell tryptaseの細胞数と定量PCRによるmRNA発現は、細胞数、mRNAともに非好酸球性群で増多していたが、mRNAでは好酸球性群はコントロールより高発現していた。好酸球性副鼻腔炎群ポリープではtryptaseのほうがchymaseより高発現しており、非好酸球性副鼻腔炎群ではtryptaseとchymaseが同様に高発現していることを加味すると好酸球性副鼻腔炎群ポリープではMCTが有意であることが示唆された。IgEとMast cell tryptaseの二重染色を行うと、好酸球性副鼻腔炎ポリープにおいて上皮内、腺組織内に浸潤したtryptase陽性Mast cellの大部分がIgE陽性であった。よってポリープ局所で産生されたIgEはMCTに分布し、上皮組織、腺組織で作用していることが示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Annals of Allergy, Asthma & Immunology
巻: 119 ページ: 120~128
10.1016/j.anai.2017.05.019