過去の研究で、代表的なアンチエイジング法とされるカロリー制限(CR)を3か月負荷したラットと、通常の餌を3か月投与したラットを組織学的に比較検討し、CR群ではヒアルロン酸含有量が優位に増大し、コラーゲンの蓄積が抑制され、声帯の障害に対する創傷治癒や改善していることを解明した。今回は、同様のラットモデルを用いてCRが喉頭に及ぼす斯様な変化の機序を解明するための免疫組織学的・分子生物学的に検討を行った。 しかし、初年度の25年度に再度同じモデルで組織学的分析を行った結果、CRは声帯粘膜固有層には上述の好影響を与えるが、筋層にはむしろ萎縮性変化を来し、悪影響を与える可能性があることが分かり、複雑な変化が生じていることが判明した。その為、研究開始当初はCR1年モデルも検討予定であったが、複雑な病態の詳細を評価する方が重要と考え、1年モデルには進まず、3か月モデルをより詳細に分析する方針へ転換した。 25年度から26年度には、組織学的評価+免疫組織学的評価用と、分子生物学的評価用の3か月CRモデルの作成と評価を免疫染色やRT-PCRを用いて行い、27年度には得られた結果の統計処理や総括を行った。 免疫染色では、CR群で、3型コラーゲンの蓄積が抑制され、酸化ストレスの指標である4-HNEの蓄積が抑制され、長寿遺伝子であるSirt1の増加を認めた。また、CR群では声帯の障害に対する創傷治癒が改善しており、CR群において障害による3型コラーゲン増加の抑制と、4-HNE増加の抑制を認めた。RT-PCRでは、ヒアルロン酸分解酵素である2型ヒアルロニダーゼの発現抑制、コラーゲン産生の指標である1型プロコラーゲンの発現抑制、長寿遺伝子であるSirt1の発現増加を認めた。 以上より、CRによる声帯粘膜固有層の変化の機序として、ヒアルロン酸の分解抑制とコラーゲンの産生抑制が関与していると推察された。
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