研究課題/領域番号 |
15K20191
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上野 貴雄 金沢大学, 大学病院, 助教 (30623649)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / ミセル |
研究実績の概要 |
ミセル化抗癌剤はミセルが崩壊することで、内包する抗癌剤が放出され、抗腫瘍効果を発揮する。シスプラチンを内包したミセル化抗癌剤NC-6004を0.9%NaClに溶かした場合、24時間で20%の崩壊率であり、ミセル化薬剤は一種の徐放性の薬剤と考えることができる。シスプラチンは時間依存性薬剤ではなく、濃度依存性薬剤と考えられておりAUCよりもCmaxが重要である。ミセル化により血中の安定性が向上し、EPR効果で腫瘍内濃度は高まるが、内包する抗癌剤を放出するのに時間を要するため、集積効果に比して抗腫瘍効果が上がらないと考えた。ミセルの崩壊を早め、シスプラチンを一気に放出させることができれば抗腫瘍効果が飛躍的に高まると考えられ、その実証にあたっている。併せて、より臨床に即した頭頸部癌モデルマウスの作成を試みている。 NC-6004に各種濃度のNaClに溶解し添加し、37℃で反応させた後,37℃で頭頸部癌細胞株であるOSC-19,OSC-20、KBとともに培養,LD50値 (50%殺細胞濃度)を求めたところ、NaClの濃度が高いほど抗腫瘍効果が高まることがわかった。また、ミセル化薬剤とNaClを反応させる温度を37℃より高めたところ、LD50値 (50%殺細胞濃度)が低下し、抗腫瘍効果が高まることがわかった。 従来の頭頸部癌モデルマウスより臨床に即したPatient-derived xenograftモデルマウスの作成を試みている。臨床検体を用いてそれをNOD/scidマウスに移植した(およそ20例)。その内、3例で生着を認めた。生着したマウス背部腫瘍を更に継代し、生着を確認した。以降、第3世代以降でマウス数を増やし、新規モデルとして抗腫瘍効果を測定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中空糸膜フィルタでの濾過による、シスプラチン濃度の測定に難渋しているが、in vitroでの抗腫瘍効果は理論通りであり、研究の継続には問題ない。
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今後の研究の推進方策 |
ミセル化薬剤の抗腫瘍効果をより高める方法を検討し、併せてより臨床に即した、モデルマウスの作成とこれによる評価を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通りの使用をしたが、効率的な予算執行により136240円が未使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に必要な消耗品の購入にあてる予定である
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