ミセル化抗癌剤はミセルが崩壊することで、内包する抗癌剤が放出され、抗腫瘍効果を発揮する。シスプラチンを内包したミセル化 抗癌剤NC-6004を0.9%NaClに溶かした場合、24時間で20%の崩壊率であり、ミセル化薬剤は一種の徐放性の薬剤と考えることができる 。シスプラチンは時間依存性薬剤ではなく、濃度依存性薬剤と考えられておりAUCよりもCmaxが重要である。ミセル化により血中の安定性が向上し、EPR効果で腫瘍内濃度は高まるが、内包する抗癌剤を放出するのに時間を要するため、集積効果に比して抗腫瘍効果が上がらないと考えた。ミセルの崩壊を早め、シスプラチンを一気に放出させることができれば抗腫瘍効果が飛躍的に高まると考えられ 、その実証にあたっている。これに併せて、より臨床に即した頭頸部癌モデルマウスでの評価を試みた。 患者から摘出した腫瘍の一部をNOD/scid マウスに移植したPatient - derived xenograftモデルマウスを作成した。生着したものを、継代しながらその腫瘍サイズを測定したが、腫瘍サイズのバラツキが大きく、抗癌剤の評価を行うには適切ではない可能性が考えられた。現在は、従来予定していた皮下移植マウスモデルでの評価を進めている。腫瘍周囲に高濃度NaClを投与し、腫瘍周囲に低濃度NaClを投与したものに比べて、ミセル化薬剤での抗腫瘍効果が高まるか検討している。
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