研究実績の概要 |
1) 鼻茸線維芽細胞と好酸球性株EoL-1細胞との共培養 共培養の培養上清中の各種サイトカイン濃度を測定した。PDGF-AB、PDGF-BB、TGF-1、EGFR ligands (amphiregulin, HB-EGF, TGF-)、IL-8、Eotaxin-1、Eotaxin-3、MMP-9については共培養上清中の濃度に変化を認めなかった。VEGF濃度は添加するEoL-1細胞の数に依存して濃度が上昇することがわかった。好酸球は鼻茸線維芽細胞からのVEGFを刺激し、血管透過性の亢進や血管新生を促進させる可能性があると思われた。 2) 凝固因子トロンビン、活性化第X因子の鼻茸線維芽細胞に対する作用 組織学的検討から、好酸球性副鼻腔炎に浸潤する好酸球は凝固系の開始蛋白である組織因子を豊富に発現していることがわかった。また、鼻茸組織には凝固系の最終産物であるフィブリンの沈着を認めることも確認した。このことから浸潤する好酸球を起点に凝固系が鼻茸組織中で活性化され、凝固因子が鼻茸線維芽細胞に作用する可能性があると考えた。最初に好酸球性副鼻腔炎鼻茸から分離培養した鼻茸線維芽細胞がトロンビンや活性化第X因子の受容体であるprotease-activated receptorsを発現していることを確認した。次に、鼻茸線維芽細胞をトロンビンまたは活性化第X 因子で刺激して上清中の各因子を測定した。その結果、トロンビンと活性化第X因子はそれぞれ上清中のフィブロネクチンとサイトカイン(TGF-1、Eotaxin-1、RANTES、IL-6、IL-8)の濃度を有意に上昇させた。以上から、好酸球は凝固系を介して鼻茸線維芽細胞に作用し、細胞外マトリックスの沈着やさらなる好酸球の浸潤などを促していることが示唆された。
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