研究課題/領域番号 |
15K20207
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
花田 有紀子 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70734044)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 聴覚 |
研究実績の概要 |
我々はcDNAライブラリを検索することにより内耳に発現している遺伝子の一つであるIDOに着目し、実際にRT-PCRでIDOが内耳(蝸牛・前庭神経節)に発現していることをすでに明らかにしていた。それと並行して、内耳に発現しており聴覚・平衡覚における働きが明らかになっていない他の遺伝子を同じcDNAライブラリから複数ピックアップした。 定量PCRを行った結果、Epiphycanという遺伝子がより内耳に特異的に強く発現していることが判明したため、我々はこの遺伝子について当初の計画のようにin situ hybridizationやノックアウトマウスの生理実験を行うことで聴覚・平衡覚における働きを調べることとした。 まず、in situ hybridizationを行った結果、Epiphycanは成体マウス・幼若マウスのコルチ器支持細胞に局在していた。この結果より、Epiphycanは聴覚伝導や内耳の構造維持において何らかの働きをしている可能性が高いと考えている。また、ノックアウトマウス作製はCRISPR/Cas9システムによって作成し、現在ノックアウトマウスの系統を確立するためにmatingを行っている段階である。これまでに明らかにしたEpiphycanの内耳特異性と内耳組織における局在から、Epiphycanが内耳の発達や機能維持において重要な役割を果たしている可能性は高いと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IDOよりも内耳に特異的に発現するEpiphycanに着目することで、順調に進捗している。特にin situ hybridizationについては、従来成体マウスの内耳組織は脱灰処理が必要であるためにmRNAの局在の同定が困難なことが多かったが、我々は手技を工夫することではっきりとした局在を示すことができた。ノックアウトマウス作製についても、CRISPR/Cas9法を用いることで当初の予定よりも早期にノックアウトマウスの系統を確立できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、IDOやEpiphycanなどピックアップした遺伝子についてその内耳における働きを明らかにしていく方針である。現在Epiphycanのヘテロマウスが生まれたところであるが、ノックアウトマウスが複数得られれば生理実験や組織構造の観察を行っていく方針である。ノックアウトマウスで聴覚障害がみられる場合は、さらに内リンパ液電位測定などの電気生理学的実験も行い内耳機能における働きを考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックアウトマウスの作成をCRISPR/Cas9法で行う計画としたことで平成27年度の必要経費が増えたため、平成28年度の交付金を前倒し請求した。しかし請求後マウスのmatingが予定よりも時間がかかったために、使用額は少額となり次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現在ノックアウトマウスのmatingを行っているので、ホモノックアウトマウスが得られれば計画通り生理実験や組織形態の観察などを行う。
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