我々はcDNAライブラリを検索することにより内耳に発現している遺伝子の一つであるIDOに着目した。しかし定量PCRを行ったところIDOは内耳における発現がわずかであり、同じcDNAライブラリから着目したEpiphycanという遺伝子がより内耳に特異的に強く発現していることが分かったため、我々はEpiphycanの聴覚・平衡覚における働きを調べることにした。平成27年度にin situ hybridizationを用いてEpiphycanの内耳組織における局在を明らかにした。 Epiphycanの聴覚維持における働きを検討するため、カナマイシンおよびフロセミドを用いて内耳障害を与え、内耳におけるEpiphycanの発現が増加していることを定量PCRおよびウエスタンブロッッティングを用いて明らかにした。さらにCRISPR/Cas9でノックアウトマウスを作成・継代した。聴性脳幹反応検査(ABR)を用いてホモノックアウトマウスの聴覚検査を行い、ノックアウトマウスでは16kHzから32kHzで野生型コントロールマウスに比べ聴覚閾値の上昇が認められた。ノックアウトマウスで難聴が認められたことより、Epiphycanが聴覚の発達または維持に重要な働きをしていることを明らかにすることができた。Epiphycanの内耳における働きを明らかにするために、ノックアウトマウスの組織学的検討を行ったが、明らかな相違は認められなかった。今後Epiphycanノックアウトマウスを用いて聴覚障害を引き起こすメカニズムについての検討を行う予定である。
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