研究実績の概要 |
唾液腺粘表皮癌の手術標本を用いて、CRTC1-MAML2, CRTC3-MAML2の発現、AREG免疫染色とRT-PCR法によるRNAレベルでの発現量の評価、EGFR免疫染色を行った。各々の結果と臨床的予後との関連についても検討を行った。 in vivo, in vitroの報告では粘表皮癌はCRTC1-MAML2でCREB経路が活性化され、CREB経路の下流にあるAREGが腫瘍生存、腫瘍形成に重要であると報告がある。AREGがEGFRに結合して腫瘍生存、腫瘍形成につながるのではと考察されている。 我々はヒトの癌組織を用いてCRTC1-MAML2とAREGの関連について調べた。 結果、CRTC1-MAML2とAREG高発現に相関関係を認めた。従来の報告どおり、CRTC1-MAML2陽性は予後良好群に多かったが、今回AREG高発現も予後良好群に多いことがわかった。 粘表皮癌の予後予測として、CRTC1-MAML2の重要性が近年提唱されているが、検査には技術的・施設的な制限がある。我々はAREGの免疫染色という簡便な方法でCRTC1-MAML2陽性を予測しうることさらには予後良好群を推測しうると考察した。 EGFRの免疫染色結果とCRTC1-MAML2の関連は認められなかった。AREGは従来EGFRのリガンドとして認識されていたが、EGFRを介さずに細胞分裂を促進する別の経路があることが他報告である。CRTC1-MAML2陽性粘表皮癌ではAREGがEGFRに結合せずに腫瘍生存、腫瘍形成に関わっている可能性も示唆された。
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