研究課題/領域番号 |
15K20209
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
菅谷 明子 岡山大学, 大学病院, 医員 (20600224)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人工内耳 / 就学児 / 英語学習 / 言語発達 / 語彙 |
研究実績の概要 |
今年度は、前年度の質問紙調査の結果を踏まえ、人工内耳装用児の言語発達に関する調査を行った。岡山大学病院およびかなりや学園にてフォローアップを受け、現在就学した人工内耳装用児に研究への参加を呼びかけ、同意を得られた児に対して、各種聴力検査、日本語の言語発達検査、英語力の評価を行った。 研究対象者147名のうち、同意を得られたのが18名(12.2%)であり、男性6名、女性12名であった。進学状況では、小学生15名のうち13名が地域の小学校の難聴学級や通級に進学、2名がろう学校・特別支援学校に進学していた。中学生1名は地域の中学校に、高校生2名は1名が普通高等学校、1名がろう学校に進学していた。新生児聴覚スクリーニングの受検率は88.8%で、進行性難聴の例を除くとほぼ全例が生後6か月以内の早期補聴を行っていた。補聴状況は両側人工内耳9名、片側人工内耳および片側補聴器6名、片耳人工内耳3名で、装用時での平均聴力は28.6dB(国際的な3分法)、70dB出力での最高語音明瞭度の平均値が83.6%であった。 対象となった児には日本語の言語発達評価として、語彙、構文、読み書き、国語・算数の学力検査、さらにはピッチ・プロソディーおよび音韻検査を行い、小学4年生以上にはローマ字課題を施行した。また中学生以上の児には英語の学力検査も実施した。 語彙力と英語学習の困難さの関連を検討したところ、昨年施行した英語学習に関する保護者への質問紙調査で、英語学習に困難を感じると回答があった児の絵画理解語彙検査(PVT-R)の評価点(SS)の平均値は5.8(n=5)、英語学習に困難を感じない、もしくはどちらでもないと回答があった児のPVT-RのSSの平均値は7.0(n=6)で有意な差は認めなかった。(p=0.671)このことから、日本語の言語発達と英語学習の困難さには明らかな関連はないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の研究成果については、長野市にて開催された耳科学会にて発表を行い、内容について討議することができた。また、この他に人工内耳装用児の言語発達に関する報告を2題国内学会にて行い、専門家との意見交換を行った。 今年度予定していた人工内耳装用児の調査を18名に対して施行できたが、検査に比較的時間を要することや、長期休暇を利用した検査になることで、当初想定していた人数には達していない。また、中学生以上の対象者が少なく、英語学習の評価を行うには不十分な人数であるため、中学生以上の対象者を増やす必要があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、英語学習の調査であるため、小学生については、まだ英語学習が評価対象となっておらず、高学年以上にはローマ字の読み書きで評価を代用した。今後、中学生以上の児にも参加を呼び掛けることで、対象者を増やす予定である。 平成29年度は本研究の最終年度であり、これまで得られたデータに症例を増やし、詳細な解析を行うとともに、論文作成にも着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品が安価で購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
データ収集および論文作成に必要な経費に使用予定である。
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