研究課題
今年度は対象者を追加し、全員で19名(男性6名、女性13名)の人工内耳装用児を対象として、英語学習および日本語言語発達との関連について検討を行った。今回、英語学習の評価の指標として、ローマ字の読み書き(「聴覚障害児の読書力と英語の学習効果に関する一研究。」東京学芸大学紀要にて使用された検査を引用)の検討を行い、その結果と、日本語の理解語彙の指標である絵画語彙検査(PVT-R)の評価点(SS)および抽象語理解力検査(SCTAW)のZ得点(過去に実施、報告された感覚器障害戦略研究の人工内耳装用児のデータの平均および標準偏差を用いて、今回の検査での得点を偏差値化)との関連を検討した。本研究に参加した19名のうち、小学生は16名で、ローマ字の評価が可能であったのが小学校4年生以上に在籍している7名であった(男性3名、女性4名)。この中で、ローマ字の獲得が全くできていなかった児(ローマ字非獲得群:A群とする)が半数を超える4名おり、残り3名は20点中4~7点獲得できていた(ローマ字獲得群:B群とする)。A群およびB群のPVT-Rとの関連を検証したところ、A群はPVT-RのSSの平均値が6.00±0.82であったのに対し、B群は8.67±2.08と、B群が良好であったが、t検定では有意差は認められなかった(p=0.06)。一方で、A群およびB群のSCTAWとの関連を検証したところ、A群はSCTAWのZ得点の平均値が52.86±5.06であったのに対し、B群は58.75±3.17と、やはりB群が良好であったが、t検定では有意差は認められなかった(p=0.16)。以上の結果からは、ローマ字の読み書きについては、日本語の語彙力(理解語彙)とは明らかな有意差は認められなかった。ただし、症例数が少ないために有意差検定に影響が出た可能性は否定できず、今後症例数を追加して検証する必要がある。
3: やや遅れている
新たに研究に参加する対象者が少なかったために、追加されたデータが限られた。また、中学生以上の対象者が新たに参加しておらず、英語の評価方法に課題が残った。
現時点では、小学生に対する英語学習の評価方法が定まっていないが、読み書きの基礎として、ローマ字を使用することで評価が代用できると考えた。しかし、ローマ字の獲得は音韻処理能力などの影響を受けるため、こうしたデータもあわせて取得する必要がある。また、英語学習が教科として確立している中学生以上に研究参加を募ることで、さらにデータを取得できると考える。
前年度に研究協力者である言語聴覚士が休職し、追加のデータ収集が困難であったため、研究計画を変更し、1年間研究期間の延長を予定しているため。
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PLoS One
巻: 13 ページ: e0193359
10.1371/journal.pone.0193359