研究課題
好酸球性副鼻腔炎の鼻茸では2型自然リンパ球(Innate lymphoid cell)が増加するなど、好酸球性上気道炎症の病態に自然リンパ球が関わる可能性が示されているが、詳細は不明である。我々はこれまでに、好酸球性副鼻腔炎の病態に微生物、特に黄色ブドウ球菌の外毒素(エンテロトキシンやαトキシン)が関与することを明らかにしてきた。一方、これらの微生物コンポートネントに対する桜桃に自然リンパ球がどのように関わるのか、未明な点が多い。そこで本年度は、黄色ブドウ球菌外エンテロトキシンB刺激に対する鼻茸分離細胞のサイトカイン産生におよぼす自然リンパ球(Innate lymphoid cell)関与について検討した。慢性副鼻腔炎兼鼻茸患者の手術時に鼻茸を切除した。鼻茸をコアグラーゼなどの酵素にて処理し、鼻茸分離細胞を精製した。鼻茸分離細胞をLineage(CD2、CD3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD56、CD123、CD125a)とCD127を用いた磁気ビーズ法にて、Lineage陰性・CD127陽性細胞、すなわち自然リンパ球を単離した。鼻茸分離細胞を黄色ブドウ球菌エンテロトキシンBにて刺激する際に自然リンパ球を添加し、サイトカイン産生の変化を観察した。鼻茸分離細胞は黄色ブドウ球菌エンテロトキシンBの曝露にて、IL-5、IL-13、IFN-γ、IL-10、IL-17AおよびIL-22の産生を示した。自然リンパ球の添加はエンロトキシンB刺激によるIL-5およびIL-13産生を増強した。一方、エンロトキシンB刺激によるIFN-γおよびIL-17AおよびIL-22産生を自然リンパ球の添加は抑制した。以上の結果より、鼻茸を構成する自然リンパ球は黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB刺激によって誘導される2型サイトカイン産生を増強し、1型サイトカイン産生を抑制する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
自然リンパ球を鼻茸細胞から単離し、培養系に添加する手法を確立し、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB刺激に対する鼻茸分離細胞のサイトカイン産生への影響を検討した点には新規性があり、また結果を得たことから、ほぼ当初の計画通りに進展していると言える。
今後は、2型自然リンパ球(type 2 innate lymphoid cells)や3型自然リンパ球の作用を検討すべく、これらの細胞分離を進めたい。また黄色ブドウ球菌エンテロトキシンBだけではなく、エンテロトキシンAやαトキシンなどの外毒素、さらにはプロテインAなどの細胞壁成分の曝露によるサイトカイン産生に自然リンパ球は関与するかなど、より深く研究を進めたい。
研究を効率的、効果的に進めた結果、試薬購入費などの直接経費を節約することができたため。
試薬購入を行い、好酸球性副鼻腔炎におけるIL-22の好酸球性炎症の抑制作用についてさらに研究を進める。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件)
Allergology International
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
巻: 65 ページ: 96-102
10.1016/j.alit.2015.08.005
International Forum of Allergy and Rhinology
巻: 5 ページ: 990-995
10.1002/alr.21628
Journal of Allergy and Clinical Immunology
巻: 136 ページ: 343-350
10.1016/j.jaci.2014.10.058