口腔咽頭領域は、絶えず外来抗原がアクセスするため、扁桃・アデノイドなどのリンパ組織が小児期には発達・肥大し、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の原因となる.扁桃は免疫監視や生体防御の初動的役割を果たすため、さまざまな免疫細胞が集積し機能している.われわれは口蓋扁桃組織に、抗原特異的な液性免疫の成立に深くかかわるエフェクターヘルパーT細胞である濾胞ヘルパーT細胞(Follicular helper T cells:Tfh)が豊富に存在することを報告した.自己免疫性疾患ではTfh細胞の異常が関係するとの報告があるが、ヒトTfl1細胞のリンパ組織での機能制御機構,小児期における扁桃肥大及び加齢による退縮機構への関与については不明な点が多い.この課題ではこの点に焦点を当て臨床的な小児OSASの解析と基礎的なTfhの関与と調節因子探索による治療への応用を検討した. 扁桃肥大症例ではTfh細胞が増加し胚中心の過形成を引き起こす.一方,Tfh 細胞はナイーブT細胞が周囲のサイトカイン環境によって排他的誘導がなされて分化するが、その制御機構に関してはまだ十分に解明されていない.われわれはこれまでに、ロイコトリエンやリポキシンなどの脂質メディエーターを誘導するアラキドン酸5リポキシゲナーゼ(Alox5)ノックアウトマウスで、胚中心の形成が少ないこと、免疫後の脾臓内の Tfh 細胞の増加も乏しくなることを発見した.このことは脂質メディエーターが Tfh 細胞の分化誘導に深く関与していることを示唆している.そこで、ヒト扁桃リンパ球を用いてナイーブT細胞が Tfh 細胞に分化する過程における脂質メディエーターの役割について検討を行った.その結果,リポキシンがTfh分化誘導に関与していることが解明されたため,この脂質メディエーター調節因子による扁桃肥大の治療への応用の可能性が考えられた.
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