昨年までの研究により、腸内細菌叢の構成変化が各種サイトカイン環境の変化を介して濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)の数的調節に関与していることが明らかとなった。マウスでは加齢により、Tfh細胞と同一の表現型を示すT細胞が増加することが報告されており、免疫老化の一つの特徴と考えられているため、本年度は、このTfh様細胞と腸内細菌叢の関連について、D-ガラクトース投与による亜急性老化モデルを用いて検討することとした。 D-ガラクトースを100 mg/kg/day 3ヶ月間皮下投与した群において、脾臓におけるTfh細胞(TfhCD4+、PD-1+、CXCR5+)の割合が顕著に増加する結果となり、これは18ヶ月齢の老齢マウスについて実施した解析結果と一致していた。これらの結果は、D-ガラクトース投与老化モデルにおいても、実際の老化と類似した免疫学的特徴を再現することが可能であることを示唆している。また、D-ガラクトース投与と並行して、バンコマイシン、ポリミキシンBを飲水投与したモデルでは、Tfh細胞増加が顕著に抑制される結果となった。また、本モデルのパイエル板におけるIL-2産生細胞について検討したところ、抗生物質投与群において、IL-2産生細胞数が有意に高い結果となった。IL-2はBCL6の抑制を介してTfh細胞分化を抑制することが報告されているため、腸内細菌がIL-2産生抑制を介して、免疫老化に伴い増加するTfh様細胞の分化および数的調節に関与している可能性が示唆された。 また近年、マウス腸内に存在するSegmented filamentous bacteria (SFB)がTfh細胞を誘導する事が報告されているが、16S rDNA配列に基づくSFB特異的プライマーを用いたPCRの結果、本研究で使用したマウス系統はSFBを保有しておらず、老化に伴うTfh細胞数の増加を誘導する他の細菌種の存在が示唆された。
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