研究課題
前年度までの実験において、ヘパリンを結合したコラーゲンスポンジ(ヘパリン結合スポンジ)は従来のコラーゲンスポンジに比べてFGF-2保持性が高いことをin vitroでの実験系で示し、FGF-2を含有させたヘパリン結合スポンジを気管欠損に移植した場合には、移植領域の上皮再生を促進する結果から得られている。本年度では、FGF-2を含有させたFGF-2を含有させたヘパリン結合スポンジを気管へ移植した際のFGF-2保持性と、FGF-2刺激により誘導されるシグナル伝達経路の活性化について調べた。ウェスタンブロッティングにより、移植後にヘパリン結合スポンジ内に保持されていたFGF-2の量を調べたところ、少なくとも移植後三日目までFGF-2のバンドが検出された。従来のコラーゲンスポンジでは三日目でFGF-2のバンドが検出されなかったため、ヘパリン結合スポンジのFGF-2保持性は生体内に移植した場合にも発揮されることが示唆された。また、移植後にヘパリン結合スポンジ内に侵入した細胞について、MAPKシグナリングの下流で活性化されるErkのリン酸化を免疫染色調べたところ、リン酸化Erk陽性細胞が移植後1および2日目において多数観察された。また、pERK陽性細胞は移植領域周囲の気管上皮細胞でも観察されたが、従来のコラーゲンスポンジを用いた場合に比べてヘパリン結合スポンジを移植に用いた場合には、移植領域周囲の気管上皮細胞におけるpERK陽性細胞が少ない様子も観察された。ヘパリン結合スポンジではFGF-2の移植領域外への流出が抑えられたことが示唆され、ヘパリン結合スポンジのFGF-2保持性が従来のコラーゲンスポンジより高いことがこの結果からも示唆された。
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Journal of Tissue Engineering and Regenerative Medicine
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10.1002/term.2204