研究実績の概要 |
本講座では再生誘導型人工気管の技術を用い、気管再生に有用な移植材料の実用化に向けて研究を行う。人工気管を移植した際に内腔面の上皮化が実用化において課題とされており、これまで研究をおこなってきた。大槻らはマウスiPS細胞を分化誘導し線毛上皮組織の再生に成功している。今回我々はiPS細胞から分化させた気管上皮組織を用いて、免疫不全ラットにてin vivoでの気管上皮様組織再生研究を目的としている。 分化誘導は大槻らの報告に順じて行う。マウスiPS細胞を1000/welの細胞数で浮遊培養し胚様体を形成する。次にその後増殖因子acvitin A(10ng/ml),b-FGF(10ng/ml)を添加し、5日間接着培養する。続いてair-liquid interface(以下ALI)を用いて維持培養を継続する。維持培養中の胚様体の上皮様組織への分化を経時的(7,14,21,28days)に組織学的、遺伝子的に評価する。これにより移植に適したタイミングを明らかにする。移植する人工気管にはコラーゲンゲルを塗布し、ゲル内に胚様体を包埋させる。 免疫不全ラット(F344/NJcl rnu/rnu)に気管欠損部を作成する。胚様体包埋モデル、controlモデルともに観察期間(移植後7日)ののちに摘出する。気管再建部位の組織学的変化をパラフィン切片にて各種染色(HE染色,免疫染色等)を行い、controlモデルと比較し評価する。 気管上皮細胞を分化誘導する段階でALIの有用性を確認する目的で、ALIを用いない培養法と、非接着プレートを用いた浮遊培養法で培養された胚様体について組織学的に差異を検討する。 ヒトiPS細胞の維持培養を開始する。維持培養されているヒトiPS細胞が多分化能を有していることを確認する目的で免疫不全マウスに移植する。iPS細胞が3胚葉成分を有する奇形腫を形成していることを確認する。
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