研究課題/領域番号 |
15K20223
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小島 敬史 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60528660)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オートファジー / 蝸牛 / 恒常性維持機能 / 音響負荷 / 加齢性難聴 / 内耳有毛細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は蝸牛において恒常性維持機能を果たしていることが予想されるオートファジー活性を観察し、その生理的意義についてin vivoで示すことである。オートファジー(自食作用)は種を越えて保存された細胞内リサイクル経路の一つで、タンパクや細胞内小器官の“品質管理”の役割を通して細胞・組織の恒常性維持に寄与しており、その障害は様々な疾患に関与している。蝸牛有毛細胞は非分裂性細胞で生涯入れかわらないことから恒常性維持の様々なメカニズムが発達しており、オートファジーの寄与も予想される。 予備実験としてGFP-LC3レポーターマウスを用い、蝸牛のコルチ器外有毛細胞とDeiters細胞、らせん神経節細胞で活性化を認めた。また、内有毛細胞ではオートファジー活性を認めなかった。加えて、内耳有毛細胞特異的ノックアウトマウス Pou4f3Cre; flox-Atg7を用い、有毛細胞でのオートファジー欠損における経時的な聴力および組織学的変化を観察することを計画した。予備実験では有毛細胞特異的オートファジー欠損マウスは対照群に比べ高音に有意な進行性難聴を認めた。組織学的には基底回転を中心にコルチ器の脱落とscar formationの像を認めた。 本研究では新たにオートファジー欠損マウスに音響負荷をかけ、感覚上皮における音響負荷刺激に対する機能的、形態学的変化を観察することを目的としている。音響負荷はフリーラジカルを発生させ、酸化ストレスで内耳障害を誘導させることが知られている。音響負荷量がある一定内の場合は負荷後2~3週間で難聴が改善するが、この聴力回復メカニズムの一部にミトコンドリア管理に重要なオートファジーが関与している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験当初より条件付きノックアウトマウスの繁殖が一つの問題となり、交配に時間を要したことに加え生後実験系に至らず死亡する個体や、実験中に死亡する個体が多くデータの収集に時間を要している。 オートファジーはその特性から恒常性維持に関与していると考えられ、欠損モデルマウスでは音響負荷刺激に対する回復力の低下を示すことを予想し実験系を構築した。しかし、予想に反し欠損モデルマウスで聴力予後がよくなるという結果を得ており、この結果をどのように解析するべきか方法を検討している段階である。 繁殖の遅れによるデータ蓄積の遅延が生じている。今後は個体数を増やしABRによる聴力経過を追うことで機能的変化についてのデータのさらなる蓄積をはかる。加えて、蝸牛の組織学的変化についての検討が必要である。具体的には各種免疫染色や電子顕微鏡による有毛細胞および神経節の変化について観察を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
繁殖の系は徐々に確立されつつあるため、今後は個体数を増やしABRによる聴力経過を追うことで機能的変化についてのデータのさらなる蓄積をはかる。加えて、蝸牛の組織学的変化についての検討が必要である。具体的には各種免疫染色や電子顕微鏡による有毛細胞および神経節の変化について観察を行っていく。加えて、上記の結果から具体的な既存の薬剤による治療が可能か検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初1年目より国際学会において発表する予定であったが、正確なデータ・解析が不十分であったためその費用を使用しなかった。2年目は当研究成果を国際学会に発表し、また英語論文を作成する計画で有り、そのために費用・必要経費を繰り越した費用を含め、2年目に使用したいと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会発表、英語論文作成において必要な旅費を含む諸経費に使用する予定である。
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