当教室で作成したオートファジー実行に必須の遺伝子であるAtg7を内耳特異的にノックアウトしたマウスを用い内耳らせん神経節におけるオートファジーの機能解析を行った。 本研究で用いたCre/AtgF/F(homo)マウスはオートファジー欠損を呈し、F/+(hetero)は欠損を示さないことがわかっていた。homoマウスは出生する率が低く、さらに出生後全身の機能低下を呈し、生後180日程度で死亡するため研究に必要な個体数の獲得に時間を要した。まずは聴力経過を追ったところ、F/Fマウスは、自然経過で難聴を呈することがわかった。F/+マウスはwild typeと同様の聴力経過であった。次いで、F/FマウスとF/+マウスに音響暴露(Temporally threshold shift model: 一過性閾値変化モデル)をかけ、それらの聴力経過を追った。実験前はオートファジー欠損マウスでは高度難聴を来しやすい、もしくは回復まで時間を要するという仮説を立てた。しかし、結果としてF/FマウスはF/+マウスに比較し音響暴露後の閾値変化が有意に小さかった。これはオートファジー欠損マウスの方が、音響暴露後に聴力が回復しやすい事を示している。既存の実験系や結果ではこの結果を支持する事が出来ず、追加実験として解剖学的変化や神経機能学的変化を観察した。らせん神経節の細胞数は両マウス間で有意差を認めなかった。次いでAB1530(Peripherinの抗体)で神経節の活動性を観察したが、これも有意差を認めなかった。現段階では聴力結果を説明する所見を得られておらず、何らかの追加実験を要する可能性がある。
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