目的:近年、粘表皮癌(MEC)の40-70%にCRTC1-MAML2もしくはCRTC3-MAML2融合遺伝子が見られることが発見され、MECの予後マーカーとして有力な研究対象となった。本研究では(1)MECの病理組織学的「疑診」例を加えて融合遺伝子陽性例の病理組織像を解析することにより、MECの診断に有用なデータを収集、日常の診断精度を向上させる。(2)MECの予後不良群に関連する融合遺伝子群、細胞周期/癌抑制遺伝子/上皮分化に関連する蛋白・RNA解析を行い、分子標的治療の根拠となるデータを集積するとともに融合遺伝子下流の制御機構を明らかにしていく。既知の報告とは異なり、遺伝子的な裏付けに基づいた病理組織学的検討に加え、より臨床的な検討も行うことで、がん治療の進歩に寄与し得る研究である。 方法:唾液腺粘表皮癌(MEC)(疑診例を含む)、唾液腺外MEC、原発不明癌頸部リンパ節転移で、ヒトから手術的に採取された病理組織標本(パラフィンブロック)を用い、(1)病理組織像の客観的かつ詳細な評価、(2)頭頸部外科医による患者背景調査、(3)RT-PCRおよびdirect sequencing法によるCRTC1-MAML2、CRTC3-MAML2融合遺伝子の確認、(4)融合遺伝子陽性群と陰性群の病理組織像の比較検討、PCR陰性例/ MEC「確診」例の5´RACE法による、新たなFusion partnerの検索(5)細胞周期/癌抑制遺伝子/上皮間葉分化関連因子の免疫組織学的検討および定量的RT-PCRを行った。
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