研究課題
タンパク質脱リン酸化酵素6型 (PP6)の異常が腫瘍化と関係するのかを、マウス皮膚の発がん実験で証明を試みた。floxed-Ppp6cゲノムをホモに持ち、Cytokeratin14 (K14)プロモーターにより、Ppp6c CRE-TAMが発現するマウスにおいて、タモキシフェン投与により表皮でPP6の触媒サブユニット(Ppp6c)を欠損させるシステムを構築し、2段階発がん実験を行った。イニシエーター (DMBA)一回投与のみで、非常に短期間(約5週間)で腫瘍が発生した。一方、コントロールマウスでは、DMBA一回投与のみでは腫瘍は発生せず、DMBA投与後、プロモーター(TPA)反復投与15週にて、はじめて、腫瘍形成が見られた。したがって、マウスの皮膚において、PP6欠損組織では、強い腫瘍促進状態にある事が示唆された。その原因を解析するために、DMBAを処理したPpp6c欠損皮膚における遺伝子上昇を調べ、IL-1β、IL-6やGM-CSF、GROα、MMP-3の発現上昇が増強されていた。このことから、炎症や細胞の生存の経路が活性化されることが示唆された。同様のことが、頭頸部の発がんでも認められるかどうかを検討した。皮膚発がんで用いたのと同じ遺伝子を有するマウスを用いて、タモキシフェンを腹腔内投与した。舌、咽頭、食道で高頻度にPpp6cの遺伝子が欠損することを確かめた。本タモキシフェン投与マウスにおいては、処理後24週では体重減少が無いことを確認した。このシステムを用いて、TAM投与後に、4NQOを飲料水に20ppmを摂取させ、24週における口腔内および食道の腫瘍発生を調べたが、炎症の所見や腫瘍の形成は認められず、より濃度の高い4NQOを用いた発がん実験を行う必要があることが分かった。
すべて 2016
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Mech Dev.
巻: 139 ページ: 1-9
10.1016/j.mod.2016.02.001