研究課題/領域番号 |
15K20241
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安藤 亮 北海道大学, 大学病院, 医員 (60399847)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 結膜リンパ腫 / レニン・アンジオテンシン系 / 受容体結合プロレニン系 |
研究実績の概要 |
結膜リンパ腫は眼付属器でみられる悪性腫瘍の中でも高い頻度でみられる疾患である。節外辺縁帯B細胞性リンパ腫(EMZL)は結膜リンパ腫では最も多くみられる組織型であるが、その病態における分子機構はよく知られていない。 レニン・アンジオテンシン系(RAS)は、生物が海から陸へと進化する過程で塩分と水分を体内に保持するために発達した循環ホルモンシステム(循環RAS)であるが、臓器局所では細胞の分化・増殖など組織修復などの役割を担っている(組織RAS)。これまでに研究代表者のグループは、組織RASおよび組織RASの上流に位置する(プロ)レニン受容体が、眼組織におけるVEGFを介した炎症・血管新生の上流で網膜疾患の分子病態を制御していることを動物モデルで示し、受容体結合プロレニン系(RAPS)という新たな病態概念を提唱してきた。RASの抑制が腫瘍の増殖や効果的に抑制することが複数の実験モデルや臨床研究で示されており、悪性腫瘍に対する治療標的としてRASは良い候補であると言われていることから、EMZLにおいてもRASやRAPSが密接に関与していると考えられる。本研究では、外科的に切除された結膜EMZL組織を用いてRAS及びRAPS関連分子の発現を解析する。 これまでに外科的に切除した結膜EMZL組織を採取する事が出来た。そして結膜EMZL組織とIM-9細胞においてRAS関連分子の発現を定性PCRで確認した。また(P)RRは、結膜EMZL組織においてB細胞マーカーCD20、血管内皮細胞マーカーCD31とさらにはB細胞においてはリガンドのプロレニンと共局在が認められた。AT1Rも同様にCD20およびCD31と、またリガンドのアンジオテンシノーゲンと共局在していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外科的に切除した結膜EMZL組織をこれまでに5症例を採取する事が出来た。そして結膜EMZL組織5例とヒトBリンパ球細胞のIM-9細胞においてRAS関連分子の発現を定性PCRで確認した。また(P)RRは、結膜EMZL組織においてB細胞マーカーCD20、血管内皮細胞マーカーCD31とさらにはB細胞においてはリガンドのプロレニンと共局在が認められた。AT1Rも同様にCD20およびCD31と、またリガンドのアンジオテンシノーゲンと共局在していた。
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今後の研究の推進方策 |
B細胞におけるRASおよびRAPSの詳細な病態形成への関与を明らかにするため、培養ヒトB細胞を用いてプロレニンおよびアンジオテンシンII刺激により、どのような分子の発現が変動するかを確認する。1.ヒトBリンパ芽球株の細胞増殖(増殖能力、生存能力)、細胞サイクル、細胞生存率、細胞形態、アポトーシスなどへの影響をフローサイトメトリーや免疫細胞染色等により解析する。2.両者による刺激は分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(ERK1/2)や転写因子NF-kBなど種々の細胞内シグナルを活性化し、細胞増殖因子のVEGFやFibroblast growth factor(FGF)、基底膜分解酵素のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-2)などの発現上昇を誘導することが報告されている[Pons M, et al., Am J Pathol. 2011; Kanda A, et al., Diabetologia. 2012]。それら炎症関連分子や血管新生関連分子の遺伝子発現をreal-time PCR法、タンパク発現をELISA法またはウエスタンブロット法を用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に沿って、研究費は順調に使用されている。予想より臨床検体の集まりが遅かったため、解析が一部行えていない。そのため少額の研究費が残存したが、次年度の研究費として繰越を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度に施行予定であった実験計画や28年度行う予定の実験費用(細胞培養試薬、抗体、遺伝子発現解析試薬、プラスチック消耗品など)に使用する。
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