研究実績の概要 |
本研究の目標は、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)患者を対象とした臨床研究で、BRVOの動静脈交叉部の血流速度プロファイル(Retinal blood velocity profile:RBVP)から乱流状態を乱流indexを用いて評価することである。この乱流indexに注目し、最終的にはBRVOの治療までを検討するのが目的である。 本年度は、昨年度の成果(全身麻酔下のネコ眼でのドップラーOCT(DOCT)血流計の測定(IOVS 2016))を基に、臨床(人眼)での測定を目標に自動トラッキングが可能なソフトウエアを開発した。健常人を対象とした臨床研究では、DOCT血流計は再現性が高く、固視微動を有する人眼でも安定して測定できることを証明した(IOVS 2017, in press)。 その上で網膜動静脈交叉部前後の血流評価を可能にするために、BRVOの好発部位である網膜動静脈交叉部前後の静脈血流を測定し、血流速度波形解析を行った。対象はコントロールとBRVO患者の暸眼、または患眼の患部以外の動静脈交叉部位である。網膜静脈速度波形には明らかな変化は認めなかった(第119回日本眼科学会総会)が、動静脈交叉部の血流速度プロファイルから乱流状態を乱流indexを用いて評価するために、1心拍中のRBVPの解析機能を付与し、現在詳細に解析中である。 また、前述のRBVP解析研究の一つとして、大動脈弁閉鎖不全症を有する大動脈炎症候群患者の網膜循環測定を行った。すると拡張期の静脈RBVPが大きく乱れていることを証明し報告した(AJO case report 2017)。今後もDOCT血流計でなければ行うことができないRBVP解析研究を発展させ、BRVOの病態解明、治療研究に役立てたいと考えている。
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