本研究は、接着因子であるNinjurin 1に着目し、網膜血管新生で重要な役割をしているマイクログリアにおける特異的Ninjurin 1の役割を解明し、新規治療戦略の基盤を構築することを目的とする。 これまでに、培養マイクログリアBV-2細胞株を用いてNinjurin1の発現をRT-PCRで定量した結果、正常環境下と比較して、LPS刺激により活性化したマイクログリアではNinjurin1の発現が増加する傾向を認めた。次に正常網膜血管新生におけるNinjurin1の発現を免疫染色により検討したところ、血管及び血管周囲にNinjurin1の強い発現を認め、その周囲にはマイクログリアが遊走していることが確認された。 次に高酸素負荷虚血性網膜症モデルマウスを作製し、Ninjurin1の発現を免疫染色を用いて確認したところ、病的血管新生周囲のNinjurin1の発現は低下していた。これらの結果から、正常血管新生と病的血管新生でのNinjurin1の役割は異なる可能性が示唆された。 次にマイクログリア特異的Ninjurin 1ノックアウトマウス作成のため、まずCXCR3-Creマウスの自家繁殖を行った。 最終年度では、タイピングにより遺伝子改変を確認しながら自家繁殖を行い、安定した繁殖を得ることが出来るようになった。また、本課題に用いている高酸素負荷装置を改良したことで、これまで不安定であった酸素濃度を一定に保つことができるようになり、実験の正確性を上げるとともに、効率性を向上することができた。しかしながら、Ninjurin1-loxPモデルの供給がうまくいかず、掛け合わせることができない状態になってしまった。また、研究体制の変化や施設の改築などが重なり、これ以上研究を進めることができない状態であった。今後は研究体制を整え、遺伝子改変マウスの掛け合わせを進めていく必要がある。
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