研究実績の概要 |
申請者の所属する研究グループでは最近、ラットミトコンドリアカルパイン-1を阻害するペプチド(カルパインペプチド)の作成に成功した。本ペプチドは点眼によってラット視神経乳頭部や網膜にまで送達されることが明らかになった(Ozaki T, Nakazawa M, et al. PLoS One 2015)。本研究は、カルパインペプチドのこの性質を利用して、カルパインが神経細胞死に関与していると想定される各種緑内障モデル動物および培養細胞において、カルパインペプチドが細胞死を抑制できるかどうかを明らかにすることを目的としている。 本年度使用した緑内障モデル動物はGLASTノックアウトマウスであり、まずこのモデル動物における神経節細胞死の自然経過を明らかにするため、生育期の網膜神経節細胞のアポトーシスの状況をTUNEL染色にて観察した。その結果、TUNEL陽性細胞は非常に少数ではあるが存在することが明らかとなった。この頻度の低さは緑内障モデル動物における神経節細胞死がきわめて慢性的に緩徐に進行することを示唆している。今後は、カルパインペプチド点眼によってアポトーシス細胞がどの程度抑制できるかどうかが焦点となるが、GLASTノックアウトマウスは非常に繁殖力が低く、研究期限内に実験に十分な個体数を確保することはできなかった。今後、導入遺伝子変異コピーが少なく、繁殖力が強い動物株を導入して研究を進める必要があることが判明したので、その旨手配している。 細胞培養系を用いた実験ではヒト網膜色素上皮細胞由来の細胞を購入してラットカルパインペプチドの細胞保護効果をみたが、種の違いからか細胞保護効果がみられなかった。今後、ヒトやマウスに特異的なカルパインペプチドの作成が望まれる。
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