研究課題/領域番号 |
15K20252
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
平野 隆雄 信州大学, 医学部附属病院, 助教(特定雇用) (90735151)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 終末糖化産物 / 糖尿病網膜症 / 糖尿病黄斑浮腫 / 自発蛍光 / 非侵襲 / 抗VEGF療法 |
研究実績の概要 |
終末糖化産物(AGEs)は蛋白質がグルコースと反応することで形成される物質で、糖尿病患者では高血糖状態が持続することで正常血糖の場合よりも糖化が進み、AGEsが促進的に産生され蓄積され、血管障害をきたすことが知られている。糖尿病網膜症(DR)を含めた微小血管障害の評価において組織AGEs量の測定は有効であることが期待されたが、臨床の場では検査の侵襲と煩雑さからその測定は困難であった。しかし、近年、皮膚中AGEs由来の自発蛍光を非侵襲で測定するAGE ReaderTM (DiagnOptics社)や水晶体内のAGEs蓄積を評価する機器としてClearPath DS-120 (Freedom Meditech社)が開発され非侵襲的に局所のAGEsを測定する方法が多様化している。糖尿病黄斑浮腫(DME)は網膜血管透過性亢進等によって引き起こされ、就労年齢層における社会的失明の原因として問題となる難治性の疾患であったが、近年、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体注射の良好な治療成績が報告されている。だが、頻回な抗VEGF薬硝子体注射は眼内炎 ・血圧上昇など全身へのリスクが懸念され、不必要な硝子体注射は可能な限り避けることが望まれる。そのため、治療前に治療効果を予見できる因子の検討は非常に重要である。我々はこの因子としてAGEsを候補と考え、AGE ReaderTMによる皮膚自発蛍光値(AF)、ClearPath DS-120による水晶体自発蛍光値(FR)とRanibizumab硝子体注射によるDME治療効果の関連について検討を行った。 研究初年度はClearPath DS-120の信頼性を判断するため糖尿病網膜症(DR)の重症度分類と測定値について検討を行った。FRがDRの重症度とよく相関することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ClearPath DS-120を用いた水晶体自発蛍光測定値(FR)の実臨床での有効性について糖尿病網膜症(DR)重症度を用い評価を行い、両者の良好な相関を確認することが可能であった。また、このFRが水晶体中のどのAGEsをより反映しているかについても評価を行った。患者の同意を得て白内障手術の際に摘出した水晶体を東海大学農学部バイオサイエンス科(永井竜児)にて液体クロマトグラフィータンデム質量分析器を用い各種AGEs(CML,CEL,MG-H1,CMA,CEA,GA-pyridine)について測定した。現在、結果について解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
液体クロマトグラフィータンデム質量分析器を用いて測定した各種AGEs(CML,CEL,MG-H1,CMA,CEA,GA-pyridine)について、より症例数を増加し病態・AF・FRとの関連について検討を行う。また、FRがDRの病態をよく反映することが確認されたので、DME症例においてそのFR値とラニビズマブ硝子体注射の回数についての関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Clear PathによるFR測定値の精度を検討するため予備試験として平成27年12月までにDRの重症度との比較検討を行う予定であった。しかし、統計学的に意義のある症例数を確保することに予想外に時間がかかり、最終的に平成28年4月まで予備試験に費やした。そのため、諸検査に必要な使用額が予定よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画どおり、白内障20症例・DME30症例のサンプルを採取しAGEsについて液体クロマトグラフィータンデム質量分析を行う。また、前房水についてマルチプレックスアッセイを行いVEGF濃度を含めた炎症正サイトカイン濃度・enzyme immunoassayを用い血液中のVEGF濃度を測定する。平成28年度請求額とあわせてマルチプレックスアッセイ関連試薬、enzyme immunoassay関連試薬、液体クロマトグラフィータンデム質量分析関連の試薬、解析受託費として経費を使用する予定である。
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