少子化の進むわが国において、小児眼疾患の視機能を良く保つことは必須である。先天白内障を代表とする遺伝性眼疾患は、小児の視力障害を起こす疾患として重要であるが、十分な研究がなされているとは言い難い。浜松医科大学と国立成育医療研究センターは、先天白内障を代表する遺伝性眼疾患の症例が集中しており、詳細な眼所見の検査や全身合併症を検討するのに既に多くの機器を整備している。遺伝子解析の体制も整っており、PAX6を伴う先天白内障などで変異解析の実績がある。更に、光干渉断層計(OCT)の臨床応用がはじまっており、いままで困難だった生体計測が可能になりつつある。本研究は、上記2施設を含む共同研究施設に通院している先天白内障を代表とする遺伝子性眼疾患患児を収集し、遺伝子異常を含めた原因に関する情報、種々の機器を用いた精細な臨床所見に加えて、OCTによる生体計測のデータを蓄積してわが国の遺伝性眼疾患研究の基盤とすることを目的とした。 本研究では右眼無虹彩症、左眼Peters奇形の両眼の早発型発達緑内障を発症した1例について遺伝子解析を実施した。症例は0歳女児。出生直後より両眼の角膜混濁を認め早発型発達緑内障を疑い出生6日に岐阜大学眼科に紹介となった。全身所見としては動脈管開存症・卵円孔開存症・心房中隔欠損、両側の難聴、右副耳、鞍鼻を認めた。緑内障の家族歴は認めず、また妊娠経過中に胎児に異常の指摘はなく母体の感染も無かった。疾患原因遺伝子を同定する為、PAX6遺伝子の全13エキソンについてサンガー法による変異解析を実施したが変異は同定出来なかった。さらに、次世代シークエンサーを使用して全エクソーム解析を実施した。結果、FOXC1遺伝子を含む6p25領域に約4Mbpのde novoの欠失が示唆された。
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