研究課題
本年度は、補償光学 (adaptive optics:AO) の技術を適用した共焦点走査型レーザー検眼鏡(AO-SLO)を用いて、網膜静脈閉塞症(RVO)患者における傍中心窩毛細血管網の凝集赤血球速度を評価した。黄斑浮腫を伴うRVO患者では、正常眼に比べて凝集赤血球速度が低下していること、また、凝集赤血球速度の増加と低下が、黄斑浮腫の改善と増悪に各々密接に相関していることを示した。RVOに伴う黄斑浮腫治療では、黄斑浮腫の予測できない再発が臨床上しばしば問題となる。しかし、本研究は、AO-SLOにおける傍中心窩の凝集赤血球速度をモニターすることで、黄斑浮腫の増悪や改善が予測可能となるかもしれないことを示唆した。この成果は、American Academy of Ophthalmology 2015 Annual Meetingで発表し、同内容の英語論文(査読有)を現在投稿中である。しかし、今回の研究では、得られた画質が不良となりやすい重症例が除外された比較的軽症例の解析となっており、撮像系の改良が今後望まれる。また、血圧値などの全身因子、眼圧や眼内のvascular endothelial growth factor濃度などの眼局所因子との関連が未解明であり、今後の研究課題である。
2: おおむね順調に進展している
正常眼のみならずRVO患者からもAO-SLOデータを取得することができ、さらにRVOに認められる黄斑浮腫が傍中心窩毛細血管網の凝集赤血球速度との関連を示すことができたため。
AO-SLO以外の眼底イメージング機器によって得られたデータとの関連、前述の全身因子と眼局所因子との関連について調査を予定する。
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