本研究は、虚血性眼疾患モデルの作成および虚血性眼疾患モデルのライブイメージング評価系の確立を行い、虚血性眼疾患に対するVCP ATPase阻害剤の神経保護効果の検討および神経保護メカニズムの検証を目標とし、以下の点を明らかにした。 ①高眼圧虚血再灌流ラット・レーザー光凝固誘発虚血性視神経症ラットの作成に成功した。このモデルラットでは、光干渉断層計・眼底蛍光などのin vivo イメージングによる形態的評価、更に網膜電図による機能的評価により、網膜障害の継時的な変化を詳細に検討することが可能であった。②虚血再灌流ラットにおけるVCP ATPase阻害剤の腹腔内投与(50 mg/kg/日、虚血誘導3日前から誘導後7日後まで投与)による神経保護効果の検討したところ、薬剤投与群では、虚血誘導4週間後の網膜内層菲薄化および網膜神経節細胞減少が有意に抑制されていた。また、2週間後の網膜電図での評価では、薬剤投与群では網膜内層機能を反映するb波振幅の減衰が抑制されていた。③VCP ATPase阻害剤の眼内局所投与の有効性の検討については、VCP ATPase阻害剤の硝子体内投与(25μg/眼、虚血誘導2時間前)により、虚血後の網膜内層菲薄化および網膜神経節細胞減少が軽減されることがわかった。④レーザー光凝固誘発虚血性視神経症ラットにおけるVCP ATPase阻害剤の硝子体内投与による神経保護効果の検討は行った。VCP ATPase阻害剤の投与により、虚血性視神経症における網膜内層菲薄化および網膜神経節細胞減少が軽減されることがわかった。⑤VCP ATPase阻害剤の神経保護効果メカニズムの検討では、VCP ATPase阻害剤は小胞体ストレスを緩和することで、細胞死を抑制していることが明らかとなった。
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