白内障術後眼内炎予防に用いられる様々なプロトコールの有効性を、既報告を用いたネットワークメタ解析を用いて検証した。その結果、抗菌薬前房内投与が眼内炎頻度減少に大きく寄与し、中でもヨーロッパで広く行われているセフロキシムが最も有意で、モキシフロキサシンがこれに続き、術前抗菌薬点眼よりも有効な結果となった。しかし認可された方法ではないため新たなプロトコールの有効性を、術前抗菌薬群を対照として試みた。その結果、術中術後の培養陽性率や菌量を指標にした場合、術中ヨード2回法は術前抗菌薬群と同等であった(同等性試験、投稿中)。これにより術中ヨード2回法をベースに眼内炎予防プロトコールを至適化できる可能性が示唆された。 そこでコンタクトレンズ(CL)装用者における細菌叢の変化と感染につながるリスク因子を同定することを目的に前年同様、正常CL装用者より回収したケースの汚染状態を16S ribosomal DNAコピーの定量、次世代シークエンサによるメタゲノムの検索により検証した。その結果、アカントアメーバPCR検出の有無において、細菌DNA copyの違いは認めなかったが、アカントアメーバcopy数増大にはActinomycesをはじめ多くの菌種が有意な相関を示した。また、多様性の指標であるシャノン係数もアカントアメーバPCR陽性例で有意に増大し、アメーバqPCR陽性例では、特定の菌種にとどまらない多様な細菌叢による汚染を呈していた。CLの使用状況との関連性を含め検証した場合、装用前に手指洗浄なし、CLケースの非乾燥、長期使用が細菌多様性の増大に関連しており、アカントアメーバ汚染リスクになりえると考えられた。 また感染性角膜炎の診断サポートをめざすため、所見群や16S r-DNA量を用いたAIによる診断アルゴリズム確立を試みた。その結果ランダムフォレストモデルの有効性が示唆された。
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