研究課題
黄斑円孔の修復過程にはグリア細胞の増殖、遊走が関与していることが知られている。網膜の主要なグリア細胞はミュラー細胞であることから、ミュラー細胞の機能を評価するため、下記の細胞実験を中心に行った。1. RTV rubberを用いた新しい遊走アッセイの開発 ヒトのミュラー細胞の細胞株であるMIO-M1 細胞を用いて、細胞遊走の検討実験を行った。円形の遊走阻止物としては、RTV rubber(信越化学)を用いた。遊走の予備実験は、培養皿に、RTV rubberを硬化させた円柱状の遊走阻止物を用いて行った。時間経過とともに細胞遊走が認められ、本実験系が細胞の遊走の状況が観察できるアッセイであることが確認できた。2. 内境界膜の存在下でのミュラー細胞の機能 内境界膜(構成成分はラミニン、4型コラーゲンが主体)の存在下で、ミュラー細胞の増殖、遊走に影響を与えるかどうかを検討した。ラミニン、4型コラーゲンをコーティングした培養皿では、コーティングを行わないものに比べ、細胞数の有意な増加を認めた。遊走の評価では、4型コラーゲンのコーティングにより有意な遊走の亢進を認めた。3. 遊走中のミュラー細胞の機能 ミュラー細胞は、内因性に神経栄養因子(BDNF、CNTF、GDNF)や、線維芽細胞増殖因子(bFGF)を発現することが知られており、これらは神経保護、網膜修復に寄与することが分かっている。遊走細胞においてこれらの因子の発現が亢進するかどうかを検討した。BDNF、CNTF、GDNF、bFGFの4因子とも、非遊走細胞に比べ、遊走細胞ではmRNA発現の亢進を認めており、蛍光免疫染色では、4因子ともに遊走細胞に強い蛍光を認めた。これらの結果から、遊走中のミュラー細胞では、内因性に神経栄養因子、増殖因子の発現が亢進することが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
内境界膜弁を利用した難治性黄斑円孔手術の閉鎖過程を検討するため、上記の1-3を行った。これはおおむね計画書に則しており、特に問題なく進展していると思われる。上記の研究実績の一部は、2015年4月の日本眼科学会総会で学会発表を行った。
計画書の通り、平成 28 年度は、黄斑円孔モデルにおける円孔閉鎖過程の解析平成 29 年度は、手術時に摘出した内境界膜組織の検討を予定している。これらの研究成果を、学会、および論文で発表していく。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 図書 (2件)
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