研究課題
黄斑円孔閉鎖にミュラー細胞の遊走、増殖が関与していることはすでに知られている。しかし、閉鎖過程のどの時期にどのような機序でミュラー細胞が活性化されるのかは不明であった。そこで、下記1, 2を行った。(1)人工的黄斑円孔モデルの確立ヒトと同様黄斑を有するカニクイザルを用いて人工的黄斑円孔モデルを作成した。カニクイザルの右眼に硝子体手術を行った。黄斑外の網膜から38ゲージマイクロニードルを用いて眼灌流液を注入することにより、黄斑部網膜に小さな裂隙を作成、それを広げることにより、黄斑部網膜に0.5乳頭径の人工的黄斑円孔を作成した。(2)内境界膜弁翻転法の実施と組織学的検討上記の人工的黄斑円孔モデル眼に内境界膜弁翻転法を行った。内境界膜をブリリアントブルーGにより染色し、眼内鉗子を用いて内境界膜を剥離し、黄斑円孔を被覆するように翻転させた。術後、光干渉断層計を用いて黄斑部網膜の形態を観察したところ、術10日後には黄斑の外層の閉鎖が確認された。術後10日後に眼球を摘出し、組織学的検討を行った。翻転した内境界膜弁は黄斑の硝子体腔側の表面をカバーし、一部が閉鎖しつつある黄斑円孔に嵌入していた。内境界膜弁と網膜を構成する細胞との関連を調べるために、蛍光免疫染色による検討を行ったところ、多数のGFAP陽性細胞が翻転した内境界膜弁を取り囲んでいることがわかった。GFAP陽性細胞の一部はKi-67にも陽性を示した。これらの結果から、黄斑円孔内に置かれた内境界膜弁は、ミュラー細胞の足場となり、ミュラー細胞の増殖や遊走の促進する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
内境界膜弁を利用した難治性黄斑円孔手術の閉鎖過程を検討するため、上記を行った。おおむね計画書に即しており、特に問題なく進展していると思われる。
計画書の通り、黄斑円孔患者から摘出した内境界膜組織の分子生物学的解析(組織培養、免疫組織化学染色、ウエスタンブロッティング法、酵素免疫測定法、ポリメラーゼ連鎖反応、電子顕微鏡観察)を行う。
サル眼の免疫組織染色に用いる各種抗体の購入費が、当初購入を予定していたものよりも少なく済んだため。また学会参加費、旅費が予定よりも少なかったため。
内境界膜組織の分子生物学的解析(組織培養、免疫組織化学染色、ウエスタンブロッティング法、酵素免疫測定法、ポリメラーゼ連鎖反応、電子顕微鏡観察)に使用する各種抗体、物品の購入に使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
PLoS One.
巻: 12 ページ: -
10.1371/journal.pone.0168555.