1)内境界膜に存在する因子を同定した。 ミュラー細胞からは、神経栄養因子(BDNF、CNTF、GDNF、bFGF)が産生されることが知られている。これらの因子は網膜が損傷を受けた時に、網膜神経細胞の修復および維持に関与している。ヒト内境界膜の硝子体腔側には、細胞外基質の層があることが明らかにされている。一般に細胞外基質は、栄養因子、増殖因子を保持する働きがあることから、内境界膜にこれらの因子が存在する可能性があるものと考えた。そこで黄斑円孔患者5例5眼を対象とし、手術時に剥離した内境界膜を採取し、免疫組織化学的に検討した。手術時の生体採取に関する研究はすでに岡山大学の倫理委員会の承認を得た(研究課題名:水晶体・網膜疾患における眼組織の分子生物学的解析、2014年2月27日開催の倫理委員会で承認)。その結果、内境界膜においてBDNF、CNTF、GDNF、bFGFの4因子とも免疫反応が陽性となった(DAB染色)。この結果から、難治性黄斑円孔手術で円孔内に内境界膜を翻転、移植することは、円孔内に神経栄養因子が供給され、黄斑部網膜の修復に寄与している可能性が示唆された。
2)前年度までの結果をまとめ、論文を作成した。 前年度までの培養細胞(MIO-M1)、動物実験(カニクイザル)、および上記1の結果をまとめた。 難治性黄斑円孔の手術における、内境界膜弁が黄斑円孔内で果たす役割について考察し、論文を投稿した。
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