研究課題/領域番号 |
15K20265
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
香留 崇 徳島大学, 大学病院, 講師 (50464342)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 血管新生 / PPARγ / VEGF |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症は成人の失明原因の大多数を占めており、現在の治療法は進行例には必ずしも十分とはいえないのが現状である。近年、増殖糖尿病網膜症の病因に種々のサイトカインやサイトカインの発現を制御している転写因子が関与していることをうかがわせる報告が多数なされている。そのなかでも血管内皮増殖因子(VEGF: vascular endothelial growth factor)はもっとも注目されているサイトカインであり、VEGFの抗体などは一部、臨床応用がなされている。リガンド応答性の核内受容体型の転写因子であるPPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor gamma)は脂肪細胞の分化に非常に重要な役割を担っており、インスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン誘導体の細胞内標的である。近年、PPARγが腫瘍増殖などに伴う異常な血管新生に関わっていることが明らかになってきた。また、眼内にPPARγの抑制剤を投与すると脈絡膜新生血管が抑制されることが報告されており、増殖糖尿病網膜症など血管新生が促進されている状況ではPPARγの増加が予想される。今回、硝子体手術に得られる増殖膜と硝子体液を用いてPPARγの発現をmRNAレベル、蛋白レベルで検索し、増殖糖尿病網膜症においてPPARγ発現の亢進がないかを確認する。さらに、ラットの培養グリア細胞やヒト血管内皮細胞をAGEや高濃度のグルコース下で培養することによって、転写因子PPARγの発現亢進をもたらすかどうか、またマウスの網膜新生血管モデルにPPARγのリガンドを投与することにより血管新生の抑制が可能かを検索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
眼内の検体の解析により、糖尿病網膜症の病期に比例して、眼内のPPARγの濃度が上昇する結果が得られ、VEGF濃度とも相関することが示された。眼内の増殖膜からも同様の結果が得られており、成果を論文として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
患者サンプルからの解析は既に終了し、細胞レベルでも実験を行い、結果を解析中である。今後は病態の重症度に関連するバイオマーカーになり得るか、また治療標的として使用できるか具体的な実験方法を検討中である。
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