研究課題
まずは、臨床で用いられている3種類の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害薬(Bevacizumab/Ranibizumab/Aflibercept)の極性をもつ網膜色素上皮細胞(RPE)に対する細胞毒性をTUNEL染色とMTT試験を用いて調べた。その結果、各薬剤共に極性RPEに対して細胞毒性を持たないことが分かった。次に、RPEの重要な機能の一つであるバリア機能に各薬剤が与える影響を調べた。RPEのバリア機能に重要な分子であるZO-1の発現を免疫染色で比較したところ、ZO-1の発現パターンはコントロール群、薬剤投与群で差を認めなかった。更に、バリア機能を反映している経上皮電気抵抗値(TER)を比較したがコントロール群と薬剤投与群でTERに差を認めなかった。これらの結果から、今回の条件では抗VEGF薬はRPEのバリア機能に影響しないことが示唆された。次に、抗VEGF薬が極性RPEから分泌されるVEGFに与える影響を調べた。RPEの上方に分泌されたVEGF(生体内では感覚網膜側に分泌されたVEGFに相当)はいずれのVEGF阻害剤でもほぼ完全に抑制された。一方で、RPEの下方に分泌されたVEGF(生体内では脈絡膜毛細血管側に分泌されたVEGFに相当)は、その抑制作用が薬剤によって異なり、BevacizumabよりもAfliberceptとRanibizumabの方が強力であった。更にこれらの抗VEGF薬の極性RPEの透過率をエライザ法で検証し比較した。その結果、RanibizumabがBevacizumabよりも極性RPEを約1.7倍多く透過すること、AfliberceptがBevacizumabよりも極性RPEを3割程度透過しにくいことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度実験計画に掲げていた実験の大部分(抗VEGF薬の極性RPEに対する細胞毒性の検討、バリア機能に与える影響の検討、極性RPEが分泌するVEGFに与える影響の検証など)は計画通り施行できており、再現性のある結果を得ることができた。
現在の所、本研究はほぼ計画通りに進んでいるので、平成28年度も当初の研究通りに進める予定である。具体的には、平成27年度に行った極性RPEを用いて行った研究と同様の内容を、炎症性サイトカインに暴露させた極性RPEを用いて行う。腫瘍壊死因子(TNF-a)などに暴露させた極性RPEはそのバリア機能が低下していると思われるので、抗VEGF薬の細胞毒性や透過性が正常なRPEと比較して変化している可能性が考えられる。
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