研究課題/領域番号 |
15K20272
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
山根 敬浩 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (30714448)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 屈折変化 / 疫学調査 |
研究実績の概要 |
近視は世界的に罹患率が高く、特にアジア諸国に多い。屈折度は生後成長に伴って変化し、新生児はおよそ+2D~+3D程度の遠視であるが、徐々に正視化が進み、小学校入学時には軽度遠視または正視または軽度近視になっていることが多い。その後、一般的にはさらに近視化が進み、遠視が減少して近視が増加する。近視の進行は10~14歳で顕著になるが、22~23歳位までは緩やかに近視化が続き、その後間もなくして停止すると言われている。他の海外の疫学調査でも同様の傾向があり、成人では近視が多く、高齢者になるほど遠視の頻度が高くなっている。日本で行われた調査でも同様の傾向がみられているが、これらの調査は地域住民を対象とした横断的調査であり、屈折の進行を詳細に把握するためには縦断的調査が重要になる。しかしながら、これまでに報告された屈折の経時的変化の調査は、対象人数が数百人から数千人のオーダーであり、統計学的解析に十分な人数とは言い難い。その上、各年齢時の近視の進行は、年齢のみではなく、その時の屈折度数によっても異なるため、調査対象を性別、年齢別、屈折度数別に細分化して層別解析することが必要とされるが、過去にそのような報告はない。 本研究で我々は日本人集団の大規模な屈折度数の疫学データを収集し、調査対象を性別、年齢別、屈折度数別に層別化して、屈折の経時的変化の縦断的解析および将来の屈折度数の予測が可能なアルゴリズムの作成を試みている。 これらの結果は将来的な屈折異常に対する治療や、投薬の適応を決める際に非常に有益であり、また患者の生活指導のためにも重要であると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度研究計画のうち 「1.5年以上経過を追っている症例の屈折度を診療情報から抽出し、データベースを構築」に関しては、現在までに20万人を超える日本人集団を対象とした大規模な屈折値のデータを取得しており、その中から層別解析を行うために必要な、年齢、性別、屈折度数などを抽出し5年間の変化量などをデータベース化した。 「2.海外の共同研究者からの臨床データの提供、集積」に関しては、シンガポールの共同研究者とメールやスカイプによるミーティングで、現在所持している疫学データのプロトコールやその内容など詳細を明らかにし、今後の共同研究について各種の打合せを行った。 「3.屈折値予測アルゴリズムの作成」に関しては、共同研究者とデータの使用方法や、解析する曲線モデルについて検討した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の計画としてはおおむね当初の計画通り、 「1.日本人集団における屈折度数データベースの拡張」に関しては平成27年度に引き続き臨床データを収集し、データベースを拡張していく。データベースの構築は平成28年度の前半までに完了する。 「2.民族間での比較検討」に関しては、日本人集団で層別解析した結果と、海外の共同研究者から提供されたデータの解析結果を比較検討し、近視の頻度が高いアジア人の間で同様の傾向があるか検討する。 「3.屈折値予測アルゴリズムの完成」に関しては、前年度のデータベースの日本人における年齢と屈折値から、数年後の屈折率がどうなるかを確率的に予測するロジスティク曲線を計算しアルゴリズムを作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関しては、データベース構築のための機器の購入額を計画より抑えることができた。旅費に関しては、共同研究者であるシンガポールの施設との打ち合わせなどが、実際にシンガポールを訪問せずにある程度実行できたため使用額が予定より少なくなった。人件費および謝金に関しては、研究者自身の作業により、当初より使用額が少なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品費に関しては、データのバックアップ用のHDの追加購入などを計画している。旅費に関しては、シンガポールの施設との共同研究が進捗した場合に使用し、また海外の学会などに参加し、他の国々の疫学データが利用可能であれば、積極的に交渉して活用していく予定である。人件費および謝金も、さらなるデータベースの拡張のため有効に使用していく
|