上脈絡膜用軟性内視鏡の試作品を用いて白色家兎を用いた実験をおこなった。白色家兎による上脈絡膜バックリングモデルにおいて、マイクロカテーテルやカニューラを用いた従来法と上脈絡膜腔用内視鏡を使用した内視鏡法の2群に分けて手術を施行し、合併症の発生率と有効性を比較検討した。その結果、両群ともに同等に安全に上脈絡膜腔に充填物質を注入可能であ理、内視鏡による視認性も距離の調整により良好な画像が得られた。今回、上脈絡膜用軟性内視鏡により上脈絡膜腔を直接視認するアプローチの実現性が示されたことにより難治性の黄斑円孔網膜剥離を含めた網膜剥離の低侵襲な治療と期待される上脈絡膜腔バックリングの安全性向上が得られることが明らかになった。また内視鏡で上脈絡膜腔内を直接観察するという方法により、近年注目されている緑内障領域での新たな濾過手術である上脈絡膜腔シャント手術において、シャントデバイスの位置決定や挿入の際の安全性確保にも有用である可能性がある。また加齢黄斑変性やぶどう膜炎、脈絡膜腫瘍などの脈絡膜疾患に対する診断治療への応用など、今後の上脈絡膜腔内視鏡手術として多岐にわたる発展が期待できると考えられた。 一方で、上脈絡膜用軟性内視鏡の共同研究者のEl Rayesらと、内視鏡と同様に光ファイバーとカテーテルを組み合わせた器具である、光ファイバー付きマイクロカテーテルを用いた上脈絡膜バックリングにる裂孔原性網膜剥離の治療について論文を発表している。
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