加齢黄斑変性(Age related macular degeneration; AMD)や網膜色素変性(Retinitis pigmentosa; RP)を含む網膜変性疾患は視細胞死を生じ失明へと直結する疾患群である。近年滲出性AMDに対しては脈絡膜新生血管(Choroidal neovascularization; CNV)に対する抗血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor; VEGF )療法が行われ、一定の治療効果を上げている。しかしCNVに付随して生じる視細胞死や、CNVを伴わない萎縮性AMD、RPにおいては実臨床にて使用されている治療法は存在しないのが現状である。近年の、我々の研究結果などから、視細胞死の進行には網膜内の局所炎症が重要であることが明らかとなってきた。今研究において我々はマイクログリア/マクロファージ可視化、網膜変性自然発症モデルであるMertk-/-Cx3cr1GFP/+ Ccr2RFP/+マウスに対しヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症治療薬であるマラビロクを投与し、網膜変性への治療応用はできないかを検討した。腹腔内投与を実験2週間連日投与を行った実験においては網膜変性の重症度は有意差は認めないものの、改善傾向を示し網膜下腔へ遊走するマイクログリア/マクロファージの細胞数は減少した。マラビロク投与開始時期、投与期間、投与方法などを検討しながら、統計学的検討に耐えうる試行回数を増やしている。また、マラビロクのマイクログリアにおける炎症抑制効果のメカニズムを検討するために培養マイクログリアに対しマラビロクを投与し、培養細胞の形態変化、サイトカイン・ケモカイン産生への影響検討などを行っている。現在行っている検討が終了次第、総実験データーを再検討し論文投稿を行っていく。
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