研究実績の概要 |
uPARなどの線溶系を介した網膜組織でのEMT(上皮間葉移行)誘導についてはこれまであまり報告がなく、本研究では線溶系であるuPA/uPARの相互作用に着目し、uPAR制御性EMTを網膜色素上皮細胞で検討を行うことを目的として研究を開始した。 ARPE-19細胞株を親株としてuPAR強制発現細胞株を樹立しuPAR発現を確認した。作成した細胞でEMT関連マーカー(E-cadherin, N-cadherin,α-SMAなど)の発現変化を解析したが、EMTを示唆する変動はみられなかった。アタッチメントアッセイによりARPE-19細胞のuPAR依存性細胞接着能の変化も検討したが、uPAR強制発現細胞ではプラスティック培養皿上、フィブロネクチンコート上、ビトロネクチンコート上のいずれに対しても細胞接着能は低下していた。最終年度には同ARPE-19細胞におけるuPA/uPARの関与について、3次元培養によるコラーゲンゲル収縮能の変化について、Collagen-Based Cell Contraction Assay Kitを用いて検討を行った。結果はuPARを強制発現させた細胞において、コントロールの細胞と比べコラーゲンゲル収縮能の有意な促進はみられなかった。 これらのことから、ARPE-19細胞においてuPAR単独の刺激ではEMT様変化を誘導できなかった。EMTの誘導にはTGF-βなどの成長因子やインターロイキンなど、生体内での炎症反応に伴う何らかの因子の関与も、今後検討を加える必要があると考えられた。
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