研究課題/領域番号 |
15K20300
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山道 拓 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30715165)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小児悪性腫瘍 / 横紋筋肉腫 / がん免疫 / 治療 |
研究実績の概要 |
【概要】腫瘍細胞に対する免疫監視機構は自然免疫と獲得免疫から成り、NK細胞は自然免疫の中心的役割を担っている。感染細胞や腫瘍細胞は、NK細胞の活性化に重要なレセプターであるNKG2Dに結合するリガンドを発現しており、レセプターを介して免疫担当細胞を活性化する。これにより感染細胞や腫瘍細胞は排除されるが、癌細胞が免疫回避の手段の一つとしてNKG2Dのリガンドの1つであるMICA/Bを利用していることが示唆されている。 【目的】自然免疫、特にNK細胞活性化を利用した小児悪性固形腫瘍の制御に関して、NKG2Dに注目してメカニズムを明らかにする。 【2015年度研究実施の概要】小児横紋筋肉腫細胞株として胞巣型RH30と胎児型RD,RMS-YMの3株におけるMICA/B発現をRT-PCR法、フローサイトメトリー、ELISA法を用いて遺伝子と蛋白の発現を検討した。PCRではMICAは全て陽性、MICBはRH30のみ陰性、FACSではRDのみMICA陽性、MICBは全て陰性、さらにWestern blottingにおいては RDのみMICA陽性、MICBは全て陰性であった。さらに小児横紋筋肉腫の臨床検体における免疫組織学的な検討では生検検体よりも化学療法後の検体のほうがMICA/Bの陽性例が増加していた。 【まとめ】胎児型RDのMICAにおいてNK細胞の標的になり得る可能性があることが示唆された。今後は治療標的として発がんに関与が報告されているβカテニンとの相互作用も含めて研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児横紋筋肉腫の細胞株は当教室ではすでにATCCから入手し、培養・継代に成功していたため、すみやかに解析を行うことが可能であった。臨床検体に関しても組織検体を入手できたため解析を進めている。今後は血清検体も入手して、組織検体についても臨床検体の症例を蓄積することで患者背景との相関を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当院および関連施設での小児悪性固形腫瘍の臨床検体におけるMICA/B発現および小児悪性固形腫瘍患児の血清中の可溶型MICA/Bレベルと臨床背景との相関を検討する。また肝細胞癌ではIL-1βを添加することにより可溶型MICAの生成が促進され、FGF-2を添加することによりNK細胞の感受性が亢進する報告がある。これと同様に小児横紋筋肉腫細胞株においてもMICA/Bが細胞上に発現しておらず、内因性に発現している細胞にIL-1βやFGF-2を添加することにより、MICA/Bが細胞上に発現してくるかを検討する。また小児悪性固形腫瘍におけるβカテニンの発現についても解析を行う。
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