研究実績の概要 |
腫瘍細胞に対する免疫監視機構は自然免疫と獲得免疫からなり、NK細胞は自然免疫の中心的役割を担っている。感染細胞や腫瘍細胞は、NK細胞の活性化に重要なレセプターであるNKG2Dに結合するリガンドを発現しており、レセプターを介して免疫担当細胞を活性化する。これにより感染細胞や腫瘍細胞は排除されるが、癌細胞が免疫回避の一つとしてNKG2Dのリガンドの1つであるMICA/Bを利用していることが示唆されている。 今回、自然免疫、特にNK細胞活性化を利用した小児悪性固形腫瘍の制御に関して、特に小児横紋筋肉腫とNKG2Dのメカニズムに注目した。「横紋筋肉腫の腫瘍細胞に存在するNKG2D LigandsのMICA/MICBがNK細胞に認識され、腫瘍細胞を制御可能である。」という仮説を通して、従来の化学療法を補完、代替するような免疫療法の標的となりうる因子としてMACA/MICBを検証した。まずin vitroにおいては横紋筋肉腫細胞株(RH30)、胎児型(RD、RMS-YM)を用いてMICA/BのmRNAとタンパク発現についてRT-PCR法、Western blot法、フローサイトメトリーにて遺伝子レベル、蛋白レベルの発現を解析したところ一部で発現していることが見出された。さらに横紋筋肉腫の臨床検体においては、化学療法の前後におけるMICA,MICBの発現を手術検体を用いて免疫組織学的に解析したところ、化学療法後にMICA/Bの陽性例が増加していることが確認された。in vitroの解析とあわせて、特に胎児型RDのMICAにおいてはNK細胞の治療標的となりうる可能性が示された。
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