本年度は、昨年度に作成したラットLVAモデルを用いて術後開存率の測定及び組織学検討を行った。 ウィスターラット20匹を用いて、LVAを行った。吻合部の開存率は吻合直後・1週間後・1ヶ月後の時点でそれぞれ100%・70%・65%であった。全ての実験手技は、過去に微小血管吻合術及びリンパ管静脈吻合術の経験が100例以上ある著者が術者となって行われた。 (組織学的検討) 開存例:吻合部付近を電子顕微鏡で観察すると、内腔に平行に弾性繊維の増生と膠原繊維の厚い層構造が確認された。未分化な血管が再生機構の活性化を示唆していた。一方、内膜自体の変性はほとんど無く、吻合部を含めてリンパ管から静脈に向けてスムースな移行が見られた。仮性瘤様の部分も内膜レベルではリンパ管から静脈に向けてスムースな移行が見られた。 閉塞例:吻合部付近を電子顕微鏡で確認すると、内膜の移行が不整で内膜下の組織が内腔に露出している部分に一致して、血小板の凝集が見られた。血小板周囲には変形した赤血球が集属し、血管内腔に充満していた。一方、吻合付近でもリンパ管から静脈への内膜移行のスムースな部分においては、血小板の凝集は認めなかった。 閉塞例においてはリンパ管と静脈の吻合部付近での内膜の移行が不整となっており、血管内腔に露出した内皮下組織に血小板が凝集している像が認められた。血小板の凝集は血管内腔の狭小化や赤血球等の他の血球細胞の変形及び接着を惹起したものと推測された。反対に開存例においては、内皮細胞の移行はスムースで内皮下組織の内腔への露出は認めなかった。今回の検討から、内皮下組織の内腔への露出を防ぐことが、長期間の開存を保つために最も重要な要素であると考えられた。また、今回の瘤様構造の部分が直接の閉塞の要因とならなかった様に、過度に密な吻合は必要ないと考えられた
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