研究実績の概要 |
当初の計画では、マウス頭皮下の筋肉に対して、HGF遺伝子プラスミドを筋肉内注射し、遊離脂肪を移植する予定であったが、平成27年度の予備実験段階において、プラスミドの最小有効量と考えられる容量(500μg/200μl)を頭皮下の筋肉に注入することが、技術的に難しく、プラスミドの導入効率にバラツキが生じたため、マウス背部にある左右脊柱起立筋にそれぞれ100μlを注入し、遊離脂肪移植を行うモデルに改変した。また、プラスミドの注入時期について、当初の計画では、初回投与(移植時0週)と追加投与(移植後2週、4週)の計3回の投与を予定していたが、HGF遺伝子プラスミド導入からHGF蛋白の発現が投与後1週でピークとなり、1か月程度かけて漸減していくことが判明したため、初回投与を移植前1週とし、追加投与は移植時0週のみの計2回投与に変更した。 免疫不全マウス( scid/scid)を用いた遊離脂肪移植モデルを、コントロールプラスミド群とHGF遺伝子プラスミド群の2群に分けて、移植前1週と移植時0週に左右脊柱起立筋に対して遺伝子導入を行った。そして、ヒト遊離脂肪1,0gを脊柱起立筋上に移植したのち、移植後4,8,12週の時点で、移植脂肪を回収し、量的・質的評価を行った。結果として、重量比率(移植脂肪重量/体重)については、各週いずれの時点でも有意差はなく、移植脂肪の経時的な萎縮の改善は認められなかった。しかしながら、免疫染色において、移植脂肪内における脂肪細胞の壊死に起因した油滴の量が、移植後12週の時点で、有意差を認めたため、質的な改善が見込まれることが分かった。臨床的に問題となる遊離脂肪移植後の嚢胞形成や石灰化などの合併症予防に繋がることが期待される。また、萎縮という量的な問題については、プラスミドの投与量・導入時期などについて、再検討が必要であると考えている。
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