研究課題/領域番号 |
15K20315
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
新井 雪彦 岩手医科大学, 医学部, 助教 (20458178)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生理活性タンパク質 / 皮弁 / ラミニン / 塩基性線維芽細胞増殖因子 / choke血管 |
研究実績の概要 |
ラット背部有茎皮弁の生着域に対する生理活性タンパク質含有シートが有効であるかを検討した。 Sprague-Dawley系雄性ラットの背部に3×9cm大のrandom pattern flapを挙上し、その皮弁下にラミニンに代表される細胞外マトリックス構成蛋白を含有した担体シートを間置して、血管新生および皮弁生着域の変化を確認し、以下の対照群と比較した。 対照群として、SDラット背部に3×9cm大の皮弁を挙上し、担体を間置せずに縫い戻す実験を開始した。縫合後、色素静注を行い、染色範囲と生着範囲がおおむね一致し、その範囲は皮弁基部からおよそ5cmであった。また、生着範囲は皮弁の基部から2つめの血管網までの範囲とおおむね一致し、血管網の間の細い血管(choke血管)が拡張していた。 上記と同様の3×9cm皮弁を挙上し、ラミニン、bFGFを含浸したコラーゲンシート(担体)を皮弁下に配置し、血管新生と生着域を観察したが、対照群と差を認めない印象であった。このため、SDラットの背部に1×1cm大の皮弁を脊椎を挟んで対称に4組作成し、ラミニン、bFGF、CTGF、IGF-Iを含浸したコラーゲンシートを配置して血管新生効果を観察したが、現在までの所、明らかな血管新生効果を認めていない。生理活性タンパク質の濃度や、担体成分によって期待される効果が出ていないことが考えられ、条件を変えて実験を継続する。 対照群の実験から、生着範囲を決定するに当たり、新生血管よりも血管網の位置と再構築が重要である可能性が示されたため、SDラットの背部に巾25mm、U字型の皮弁を挙上し、流入する血管を選択的に温存して、choke血管の拡張および皮弁の生着域の変化を観察する実験を行い、choke血管を拡張させる血流条件に付き一定の知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実績の概要にも記載した通り、血管新生効果が期待され、あるいは報告されている生理活性タンパク質において、in vivoでの血管新生が確認できていないため本実験を開始できていない。 本実験開始後に必要となる、コントロール群の手術手順、色素注入手順については平行して実施して、ほぼ確立している。
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今後の研究の推進方策 |
ラミニンに代表される生理活性タンパク質の濃度、担体の種類を変えて実験を行い、血管新生効果を得られる条件を検討する。 血管新生効果による皮弁生着生着域の変化を評価するため、皮弁の血流状態の変化が血管網の変化を通じて生着領域の変化に及ぼす影響についても、U字型皮弁の実験を通して調査する。 血管新生効果および皮弁の血管網の変化を評価するために使用する、透明標本化またはマイクロフィル注入とレントゲン撮影についての手順の確立を、上記実験と平行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の支出の大きな部分を占めると予想されたのは、生理活性タンパク質等の試薬購入費であるが、血管新生効果が確認できていないため、使用予定数量の購入に至っておらず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究、実験の進捗に伴い、試薬購入費が増加する見込みである。
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