Wnt遺伝子群は、発生に伴うパターニングを介した形態形成における細胞間シグナル分子の一つとして広く知られている。一方で、哺乳類においてもある発生段階までは、皮膚の創傷は瘢痕を残すことなく再生する。発生に伴う形態形成では分泌性シグナル分子を介した相互作用が細胞間コミュニケーションの方法として使われており、この細胞間シグナル分子の中で中心的な作用を及ぼす因子としてWntファミリーがある。この中には17種以上のメンバーがあり、線虫、昆虫などの下等生物からマウス、ヒトに至るまでの高等動物において、Wnt遺伝子群は発生のさまざまな局面で時間的、位置的に特異的な発現を示し、形態形成の誘導因子、細胞の極性決定因子、増殖分化の調節因子として機能していることが知られている。本研究では、研究室が独自に開発したマウス胎仔の皮膚再生モデルを用いて、さまざまな発生段階のマウス胎仔に創傷を作成し、その治癒過程とWnt遺伝子発現の関連を観察した。さまざまな発生段階のマウス胎仔に創傷を作成し、さまざまな時間経過の後に創とその周囲の組織を回収し、凍結標本、パラフィン包埋標本を作成し、real time RTPCR用のサンプルの採取を行い定量的に観察した。そして、さまざまなWnt関連因子の発現を、免疫染色、in situ hybridization、real time RTPCTRを用いて発現とその局在を観察した。さらにWntの発現を小分子を用いて発現の抑制、ならびに増強を試み、マウス胎仔の皮膚再生に及ぼす影響について観察した。そして、発現が確定できたWnt関連因子につき、発現をsiRNA試薬を創傷を作成した羊水内に注入し、創傷に及ぼす影響を観察した。
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