研究実績の概要 |
胎仔の創傷治癒過程や口腔粘膜の創傷治癒過程では、傷跡を残さず治癒する(scarless wound healing)ことが知られ、これまで創傷治癒研究のモデルとなってきた。2013 年に、Hippo pathway で知られる Yorkie のホモログである YAP(Yes-associated protein)が、stem progenitor cell の増殖と表皮の 分化のバランスをコントロールしていることが発表され(Beverdam A. et al. J Invest Dermatol.)、2014 年には同じく Yorkie ホモログである TAZ(transcriptional coactivator with PDZ-binding motif)とともに、 成獣マウスの皮膚における創傷治癒過程で核内移行することで創傷治癒に関与している可能性が 報告された (Lee MJ. et al. J Invest Dermatol.)。しかし、創傷治癒過程における YAP や TAZ の直 接的機能や胎仔の創傷治癒過程での YAP や TAZ の報告はこれまでない。 本研究の成果から、胎生 13 日創作成後 24 時間後の創傷組織では創傷部、辺縁正常部ともに YAP,TAZ の核内 移行像が認められたが、胎生 15 日、17 日 24 時間後の創傷組織では、創傷部では核内移行率が高 かったが、辺縁正常部は細胞質への局在がほとんどであったことが示された。また人のケロイドの内部でもYAP/TAZの活性化が認められたことから、YAP/TAZが瘢痕形成に強く関与していることがこの研究から示唆された。
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