研究課題/領域番号 |
15K20324
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
加茂川 留理 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70749324)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 抗張力反応 |
研究実績の概要 |
これまでマウス皮膚持続的張力負荷モデルをもちいた検討を行っていたが、培養したマウス線維芽細胞をin vitroにて一定方向へ伸展刺激を加える検討を行った。結果、細胞は伸展収縮の方向と垂直方向に配列した。また遺伝子発現の検討を行ったところ、同様にsmooth muscle actin(SMA)の発現を認め、in vivoと同様の結果を示した。しかしながらkeratin 5陰性の終末分化に近い表皮細胞において同様の検討を行ったところ、SMAの発現をin vivoほどではないにしても認めらた。すなわち、in vivoの表皮細胞にて発現していたSMAは伸展刺激により表皮細胞が独自に発現するだけでなく、なんらかのシグナル伝達においても発現が促進されている可能性が示唆された。これまでケロイド・肥厚性瘢痕においては線維芽細胞に着目された研究がメインであったが、表皮細胞からもSMAが発現することから同部にも着目した検討が新たに必要であることが示唆された。 そこで、血管内皮前駆細胞において張力によるSMA発現を抑制するPDGF受容体キナーゼ阻害剤であるAG1296をin vitroにおいて用いて、伸展刺激を加える検討を行った。その結果、表皮細胞、線維芽細胞いずれにおいても、伸展収縮の方向と垂直方向に配列するものの、SMAの発現は抑えられる形となり、コラーゲンI型の発現量も低下する形となった。これは線維化が抑制され、scarless wound healingへの糸口と期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、in vitroの実験により、経時的に表皮細胞の挙動を観察し、PDGF受容体キナーゼ阻害剤であるAG1296によりSMA発現を阻害したときの表皮構造につき詳細に観察し、その意義について検討した。
|
今後の研究の推進方策 |
請者の研究グループの所有する表皮細胞特異的CreマウスであるKeratin5-Creマウス、またはKeratin14-CreERT2マウスとの交配により表皮細胞特異的ノックアウトマウスを作成し、皮膚持続的張力負荷時の表皮における該当遺伝子の機能をより特異的に解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いたin vivoではなく、in vitroによる実験であったため、マウス購入、飼育費が削減できたため
|
次年度使用額の使用計画 |
表皮細胞特異的ノックアウトマウスを用いた検討を行うため、その飼育費等に充当する。
|