研究課題/領域番号 |
15K20333
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大網 毅彦 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70527887)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞死 / 免疫麻痺 / 盲腸結紮穿孔 / 集中治療 |
研究実績の概要 |
敗血症ではCD4+ T細胞をはじめとした免疫担当細胞のアポトーシスによる免疫麻痺が予後悪化につながる一方,異なるタイプのプログラム細胞死を惹起し得るオートファジーの関与は十分に解明されていない.本研究では,免疫麻痺とオートファジーの関連を明らかにするために,T細胞のオートファジーを特異的に欠損させたAtg5コンディショナルノックアウトマウス (CD4-Cre/Atg5f/f) に対して盲腸結紮穿孔 (CLP) 手術を行い,敗血症腹膜炎モデルを作成し24時間後に儀死せしめ解析した.CD4-Cre/Atg5f/fマウスでCD4+T細胞数の低下,アポトーシス活性の亢進を認めた.CLP群でアポトーシス関連遺伝子であるBIMの発現が有意に亢進していた.また,CD4-Cre/Atg5f/f マウスでPDCD1の発現が亢進する一方,アポトーシス抑制遺伝子であるBCL2の発現は有意に低下していた.CD4-Cre/Atg5f/fマウスのCD4+T細胞ではミトコンドリア蓄積が認められ,CLP群のCD4-Cre/Atg5f/fマウスのミトコンドリア膜電位はコントロール群に比べて有意に低下していた.さらに,CD4+T細胞のIL-10産生はCLP群のCD4-Cre/Atg5f/fマウスで有意に上昇していた.そして,生存率はCLP群のCD4-Cre/Atg5f/fマウスで有意に低下していた.敗血症の病態でT細胞のオートファジーはアポトーシスとのクロストークを介してプログラム細胞死を抑制し,生体保護的に働いている可能性が示唆された.本研究結果は,今後オートファジー機構活性化による免疫麻痺の改善を企図した敗血症治療へ応用するうえで試金石となりうる有用な業績であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回CD4 T細胞特異的Atg5ノックアウトマウスを用いて敗血症モデルであるマウス盲腸結紮穿孔(cecal ligation and puncture;CLP)モデルを作成し,免疫麻痺に関する機能解析を行い,敗血症病態におけるアポトーシスとオートファジーのクロストークを解明することが研究の目的であった.研究実績で述べたように,敗血症の病態でT細胞のオートファジーがアポトーシスとのクロストークを介してプログラム細胞死を抑制し,生体保護的に働いている可能性が示唆された.オートファジーの制御による敗血症の治療につなげる最終的な段階までは到達していないものの,一定の成果を海外誌に報告するために現在論文投稿の作業を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究結果を踏まえた治療への応用として,ラパマイシンやインスリンなどオートファジーの制御効果(促進ないし阻害)が知られている薬剤の投与により,敗血症モデルで実際にオートファジー,細胞死,さらには全身性炎症反応が制御されているかにつき詳細な検討を加える. そして,最終的に個体の生存率を改善しうる治療候補薬をリストアップする.これらの結果を元に,マウス敗血症モデルでの結果がヒトに応用可能かどうかを調べるために,将来的には患者検体からのヒト培養細胞などを用いて,敗血症環境での細胞死の制御が行われるかについての詳細な検討へと発展させる見込みである.
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ、計画通り使用したが残金が端数となったため次年度へ繰越とした。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に引き続き実験を行い予定していた試薬等を購入する。さらに本研究の成果を海外で発表するための渡航費や学会参加費に使用する。
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