研究課題/領域番号 |
15K20337
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
田中 卓 岐阜大学, 医学部附属病院, 医員 (50750345)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 敗血症 / 急性腎障害 / 血管内皮障害 |
研究実績の概要 |
当初SDラットを用いた敗血症モデルによる検討を予定していたが、薬物使用量や免疫染色やタンパク発現評価に用いる抗体の多様性を考慮しマウス敗血症モデルを用いることにした。LPS投与により作成した敗血症マウス(BL6 background、10週齢、オス)に対して好中球エラスターゼ阻害薬を用いて検討を行った。まずLPS投与後、3、6、9、12時間後にシベレスタットを0.2mg/kgのDoseでマウスに投与し48時間後の生存率を比較したところ未治療マウスの生存率が14.3%であったのに対し治療群で83.3%と著明な改善を認めた。急性腎障害の評価についてKim-1の免疫染色を行ったところ、LPS投与48時間後において未治療群では尿細管上皮に著しいKim-1の発現を認めたがシベレスタット治療群では減少しており、ウェスタンブロットにてタンパク発現を定量的に評価したところ治療群で有意に発現が低下しており、シベレスタットは敗血症による急性腎障害を軽減することが示唆された。血管内皮障害についても走査型、透過型電子顕微鏡により超微形態を確認したところ、シベレスタット治療群において血管内皮の浮腫の軽減、腎糸球体に特徴的な有窓型血管の構造が保たれており、シベレスタット治療群で障害が抑制されていることを証明できた。この障害の程度については組織中のトロンボモジュリン発現量を定量することでも証明できている。また、レジンを用いた腎臓の血管鋳型を作製したところ未治療群ではShamに比べ敗血症により血管鋳型の形成が阻害されており微小循環障害の存在が考えられたが、シベレスタット治療群においては血管鋳型の形成障害が抑制されており、敗血症により生じた血管内皮障害による微小循環障害を契機とした急性腎障害をシベレスタットは抑制することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、LPSを用いた敗血症性急性腎障害モデルマウスの作製と血管鋳型、凍結割断法によるサンプルの電子顕微鏡を用いた急性腎障害の形態学的解析方法の確立が平成27年度の目的であったが、すでに終了し、敗血症によって生じた腎臓の血管内皮障害に対して、好中球エラスターゼ阻害薬シベレスタットナトリウムを投与することでその障害を軽減できるかを検討中である。以上より当初の予定以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症性急性腎障害モデルマウスを用いたマイクロアレイ解析をはじめとした分子生物学的アプローチによる敗血症性急性腎障害の病態の把握を行う。また、好中球の数が非常に少ない好中球コロニー刺激因子G-CSFのノックアウトマウスを用いて好中球エラスターゼの敗血症における役割を調査する。この研究についてはすでに着手している。
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