NETs(Neutrophil Extracellular Traps)とは、好中球がDNAを含む網目状の構造物を能動的に放出する現象で、重要な感染防御の役割を担っている。その一方で、NETsの過剰発現は炎症を誘導し、組織損傷を引き起こす可能性も報告されている。 平成25年~26年度のARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome:急性呼吸促拍症候群)を対象とした研究により、ARDS症例の喀痰中ではNETs発現量とステロイド投与に対する反応性は症例により異なることが明らかになった。そのため、我々は患者個々の侵襲に対する好中球の応答性には個人差があるのではと考えた。本研究ではARDS患者の喀痰や血液中の好中球の応答性をin vitroにおいて種々のNETs発現刺激を用いて評価し、臨床データと組み合わせることで新たな治療戦略を構築することとした。 臨床において各種病態・重症度の好中球を採取し、それを用いて、種々のNETs刺激因子やステロイドを用いて好中球の応答性を見るためにまず、健常人の好中球を用いてNETsの発現を見ることとした。現在までにin vitroでの実験系を確立し、大気中の酸素存在下と低酸素下で5人の健常人の好中球を用いて検討した。その結果、低酸素条件下でNETsの発現減少率は平均58.7%であり、低酸素下でNETs産生が抑制されることが明らかとなった。 今後、臨床において各種病態・重症度の好中球を採取し、種々の条件下で好中球の応答性を評価し、健常人やARDS患者においてNETsの発現に差異が見られるかを評価していきたい。
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