研究課題/領域番号 |
15K20342
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
朱 鵬翔 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (40380216)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 軽度外傷性脳損傷 / 高次脳機能障害 / インフラマソーム / ASC / TNFα / IL-1β |
研究実績の概要 |
昨年度では軽度外傷性脳損傷(mild traumatic brain injury, MTBI)モデル動物を作成した。このモデル動物ではMTBIの患者によく見られる高次脳機能障害、特に記憶障害と全般性注意障害並びにMTBI患者の脳組織の病理変化を再現できた。このモデル動物を利用して、高次脳機能障害のメガニズムの解明やその治療法の開発に役立つと期待できる。さらに、このMTBIモデル動物用いて、ASC-KO マウスとそのWT littermateを比較した。脳損傷後Open field test とMorris water maze testを行い、ASC KO マウスとWT マウスの行動を分析した結果、ASC-KOマウスがWTマウスより優れた記憶能力と安定した精神状態を示した。サイトカインを調べた結果、ASC-KOマウスの脳内のIL-1βとTNFαの発現はWTマウスより有意に減少した。IL-1βとTNFαは炎症性サイトカインとして、免疫細胞の増殖を促進し、これらの濃度が高いほど、炎症反応が活発であると考えられる。ASCはインフラマソーム活性化の鍵となるアダプタータンパク質の成分で、ノックアウトされると炎症反応が抑制される。これらの結果から、炎症反応によって神経細胞体と軸索の損傷が悪化するか、もしくは回復が遅れることにより、高次脳機能障害が起こると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中大脳動脈閉鎖モデルマウスを用いて、ASCノックアウトマウスとC57BL/6マウスを比較したが、梗塞により壊死した脳組織のボリュムに差が見られなかった。両者の脳内の炎症因子を調べた結果、ASCノックアウトマウス脳内のIL-1βとTNFαの発現はC57BL/6マウスより有意に減少した。これらの結果を踏まえて、昨年度では軽度外傷性脳損傷(mild traumatic brain injury, MTBI)モデル動物を用いて、ASCノックアウトマウスとC57BL/6マウスを比較した。C57BL/6マウスと比較して、ASCノックアウトマウスでは高次脳機能障害の改善と脳内炎症因子の発現の減少が見られた。これらの結果から、外傷性脳損傷により高次脳機能障害のメガニズムまたは自然炎症との関連性の解明を期待できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はASC KO マウスのhomo type とwild type 由来の骨髄単核球(MMφ)とMicroglial (MG)の初代培養を行う。MMφやMG と低酸素等の各種ストレス障害を加えた初代培養神経細胞との共培養(両者をmix して培養する場合と、カルチャーインサートを用いて両者が直接接触しないようにして培養する2つの方法)を行う。これにより、マクロファージ或いは マイクログリア依存性の神経細胞死機構を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画した脳梗塞モデル動物から外傷性脳損傷モデル動物に移行したため、予定していた初代培養実験を来年度することになった。その培養実験用の材料と消耗品代が次年度繰越金にした。
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次年度使用額の使用計画 |
ASC KO マウスのhomo type とwild type 由来の骨髄単核球(MMφ)とMicroglial (MG)の初代培養を行う。MMφやMG と低酸素等の各種ストレス障害を加えた初代培養神経細胞との共培養(両者をmix して培養する場合と、カルチャーインサートを用いて両者が直接接触しないようにして培養する2つの方法)を行う。
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