研究実績の概要 |
平成27年度と28年度に、中大脳動脈閉塞(MCAO)モデル動物を用いた実験では、野生型(wild type, WT)マウスに比べて、ASCノックアウト(knock out, KO)マウスの虚血側大脳組織内の炎症因子(TNFα, IL-1β)は虚血後有意に低く、脳梗塞体積も減少傾向が見られた。また、軽度外傷性脳損傷(MTBI)モデル動物を用いた実験では、ASC KOマウスはMTBIを受けた後、WTマウスより優れた記憶能力と安定した精神状態を示した。中大脳動脈閉塞実験と同様にサイトカインを調べた結果、ASC-KOマウスの脳内のIL-1βとTNFαの発現はWTマウスより有意に減少した。平成29年度に、我々はASC KO マウスのhomo type とwild type 由来のMicroglia (MG)と低酸素ストレスを加えた初代培養神経細胞の共培養を行った。初代培養神経細胞は6時間の低酸素負荷をかけられた後、カルチャーインサートを用いて、MGと共培養された。共培養24時間後、培地中の炎症因子の濃度をELISAで調べた結果、ASC KOミクログリアと共培養した神経細胞の培地のIL-1βとTNFαの濃度が、WTミクログリアと共培養した神経細胞の培地に比べて、有意に低下していた。ASCがノックアウトされるとインフラマソームが活性化出来ず、炎症反応が抑制されたと考えられた。以上のことより、インフラマソームの活性化を障害することにより炎症反応が抑止され、神経細胞への二次傷害が阻止された結果、神経機能障害が改善されたと推測される。
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